疾患を疑うポイント
●春先に大量の水様下痢便を伴う乳幼児の感染性胃腸炎をみたらロタウイルスを疑う.
学びのポイント
●ロタウイルス胃腸炎の臨床的重症度は,不顕性感染から,軽症胃腸炎,重症胃腸炎,重度の脱水症をきたし死に至る者まで幅広い.
●脱水症を伴うことが多く,急性腎不全や急性脳症などの重篤な合併症を伴うこともある.
▼定義
ロタウイルスは,レオウイルス科ロタウイルス属に属する.構造蛋白VP6の抗原性によりA~G群に分類されるが,ヒトから検出されるのはA~Cの3群で,乳幼児の胃腸炎の原因は主にA群である.
▼病態
ロタウイルスは経口的に感染し,主に小腸の絨毛上皮細胞に感染して増殖することで胃腸炎症状を引き起こす.糞便中に多量に含まれるウイルスを経口的に摂取することによりヒトからヒトへ感染する.臨床的重症度は,不顕性感染から,軽症胃腸炎,重症胃腸炎,重度の脱水症で死亡に至る者まで幅広い.脱水症による急性腎不全や,急性脳症などの重篤な合併症を伴うことがある.
▼疫学
わが国におけるロタウイルス胃腸炎の主な流行期は,冬(1月頃)から初夏(6月頃)にかけてで,ピークは3~4月であるが,感染者は通年性に観察される.感染者の多くは5歳未満の乳幼児で,6か月~2歳の初感染で重症化しやすい.
▼分類
ロタウイルス粒子の外殻には中和にかかわるVP4とVP7の2種類の構造蛋白があり,これによりそれぞれP血清型とG血清型に分けられ,その組み合わせにより多くの血清型に分類される.ヒトから検出されるロタウイルスの大部分は,G1P[8],G2P[4],G3P[8],G4P[8],G9P[8]である.
▼診断
感染性胃腸炎と臨床診断され,特に3~4月の発症であり,大量の水様下痢便により脱水症状を呈している場合はロタウイルス胃腸炎が疑われる.ロタウイルスの検査診断法としては,EIA法やイムノクロマト法によるロタウイルス抗
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