診療支援
治療

2 咳喘息(アトピー咳嗽も含む)
cough variant asthma and atopic cough
新実 彰男
(名古屋市立大学大学院教授・呼吸器・免疫アレルギー内科学)

疾患を疑うポイント

●アトピー素因を有したり症状の季節性を伴う慢性咳嗽患者においては咳喘息とアトピー咳嗽を疑う.

●β2刺激薬が咳喘息には有効,アトピー咳嗽では無効であることが鑑別のポイント.

学びのポイント

●咳は患者の受診動機として最も頻度が高い自覚症状であり,長引く咳を訴えて受診する患者が増加している.

●咳喘息は,8週間以上持続し胸部X線や身体所見の異常を伴わない「狭義の」慢性咳嗽の約半数を占める本邦最多の原因疾患.

●「咳だけを症状とする喘息」である本症では,喘息と同様に好酸球性気道炎症やリモデリングが認められ吸入ステロイド薬が奏効する.

●アトピー咳嗽は,頻度は高くないが咳喘息と鑑別を要する類縁疾患.

▼定義

‍ 咳喘息は,喘鳴や呼吸困難を伴わない慢性咳嗽,気道過敏性の軽度亢進,気管支拡張薬が有効で定義される喘息の亜型(咳だけを症状とする喘息).

▼病態

アレルギーの関与

 吸入性抗原への感作(特異的IgE抗体が1種類以上陽性)が60%の患者で認められるが,個々の抗原での特異的IgEの陽性率,陽性抗原数,総IgE値は典型的喘息に比して低い.アレルギー性鼻炎の合併頻度は典型的喘息で70%弱,咳喘息で50%弱である.

気道れん縮と気道過敏性

 スパイロメトリーのFEV1は正常範囲内であることが多いが最大呼気中間流量(maximal mid-expiratory flow:MMF),V25(25%肺気量位での呼気流量)など末梢気道閉塞の指標はしばしば低値を示す.軽度の気道れん縮が咳受容体を刺激して咳を生じると考えられる.気道過敏性は,典型的喘息に比して軽い傾向がある.

病理像

 典型的喘息と同様に,中枢から末梢気道までの好酸球浸潤や炎症の持続に伴う気道リモデリング(不可逆的な組織学的変化)を認め,抗炎症治療の重要性が示唆される.

▼疫学

 『咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019』では,3~8週間持

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?