診療支援
治療

3 グルホシネート含有除草剤
glufosinate containing herbicide
廣瀬 保夫
(新潟市民病院・救命救急・循環器病・脳卒中センター・センター長)

▼概説

 グルホシネート(glufosinate)は,1984年に農薬として登録され除草剤として広く使用されている.当初はヒトへの毒性は低いと考えられていたが,実際の経口摂取による中毒例では重症化する例,死亡例が散見されている.本中毒では,服毒直後は比較的軽症にみえても,6~48時間程度の症状に乏しい時期,いわば潜伏期の後に,けいれんや呼吸停止など重篤な症状が出現する点が特徴で,診療する際に注意するべきポイントとなる.

▼毒性のメカニズム

 グルホシネート含有除草剤は,主成分であるグルホシネートと展着剤として添加される界面活性剤を含んでおり,それぞれが毒性に関与すると考えられている.

 グルホシネートはリンを含むアミノ酸で,植物においてはグルタミン合成酵素を阻害することによって除草剤としての作用を発揮する.人体に摂取された場合の毒性のメカニズムは不明な点が多い.グルタミン合成酵素を阻害し神経伝達物質であるグルタミン酸が過剰になり中枢神経毒性をきたす可能性,グルホシネート自体がグルタミン酸類似物質として作用する可能性などが推定されているが,完全には解明されていない.

 グルホシネートは経口摂取の後,消化管よりすみやかに吸収され,40~50分後に最高血中濃度に達する.その動態に反して中枢神経症状は遅発性に出現するが,その機序も不明である.

 界面活性剤は,消化管粘膜刺激作用による悪心・嘔吐などの消化器症状,血管透過性亢進による低容量性ショック,心筋抑制による循環不全などをきたす.特に大量に服毒した例では界面活性剤による循環不全が症状の主体になる例もあり,注意を要する.

▼中毒症状

 服毒後早期は,主として界面活性剤による粘膜刺激症状,すなわち悪心・嘔吐,下痢,腹痛,咽頭痛などがみられる.大量服毒例では低容量性ショック,循環不全を呈する.重症例では,6~48時間後にグルホシネートによる遅発性の中

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