▼概説
フグ中毒はフグに含まれる原因物質のテトロドトキシンを経口的に摂取することにより発症し,日本では1995年以降,フグ中毒による死者数はほぼ毎年0~3人で推移している.テトロドトキシンは細菌により産生され,食物連鎖による生物濃縮でフグに蓄積され,フグ以外ではツムギハゼやヒョウモンダコにも認められる.
▼毒性のメカニズム
テトロドトキシンは,フグの肝臓と卵巣に高濃度に含まれているが,種類によって腸や皮,筋肉にも含まれており,季節や産地によっても毒の強さは異なる.ヒトに対するテトロドトキシンの作用機序は末梢神経および骨格筋細胞に存在するテトロドトキシン感受性ナトリウムチャネル〔特にRanvier(ランヴィエ)絞輪に多く存在する〕を阻害することにより,活動電位の発生と興奮伝導が抑制され,運動麻痺,知覚異常,自律神経障害などの症状が出現する.フグ中毒患者では,外見上昏睡状態にみえても脳波や聴性脳