急性中毒という確定診断を下し,的確な治療を行うためには,中毒の原因となった物質の分析を行い,正確な濃度を測定することが理想であるが,多くの医療機関では治療に間に合うようなタイミングで結果を得ることは困難であり,また,時には「中毒であるかどうかもわからない」ことも少なくない.このような状況下で診断と治療を進めるためには,急性中毒特有の診断のポイントが存在する.
▼どんなときに急性中毒を疑うのか
ひとことでいうと「説明がつかない病態」ではすべて,急性中毒を疑うべきである.
意識障害の鑑別としてよく使われる語呂合わせの“AIUEO TIPS”〔第1章「意識障害」の項の表1-56図参照〕では,“O”は“opiate(オピオイド類をはじめとする薬剤)”“overdose(過量服用)”が急性中毒を疑う所見として挙げられているが,急性中毒では意識障害以外にも,呼吸障害(低酸素血症,チアノーゼ),循環障害(ショック,頻脈,不整脈),神経系の異常(縮瞳・散瞳・不随意運動・線維束れん縮),体温異常(高体温・低体温)などの症状が起こりうるため,説明がつかないあらゆる症状・徴候・事象に遭遇した場合は,急性中毒を念頭におく必要がある.
▼患者・家族・関係者から聴取すべき情報
「説明がつかない病態」に説明をつける,急性中毒であることを明らかにするためにも,また,中毒起因物質を推測し,治療方針を決めるためにも,患者や家族,救急隊員や警察官,医療機関などから情報を得ることは非常に重要である.
自殺企図などで本人が正確な情報を話してくれないことや,事件・事故などで,当事者が中毒であることに気がついていない場合もあるので,情報の正確性に疑問がある場合,複数の関係者から情報収集することも考えるべきである.
情報収集のポイントとして,一般的に“5W1H”〔When(いつ) Where(どこで) Who(誰が) W
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