【疾患概念】
手・指の循環障害には,外傷を契機とした急性の動静脈血行障害と,慢性的な末梢動脈血行障害によるものに大別される.いずれも手指の冷感・蒼白・しびれ・痛みを伴い,進行すると皮膚潰瘍あるいは壊死に至る.しかし,その治療方針は全く異なる.
1.病型
【1】外傷による手指の循環障害
(1)血管損傷を伴うもの
診断のポイント
血管損傷が疑われる場合は直ちに血行再建を行う.必要であれば術前あるいは術中に血管造影を行って損傷部位を確認する.
治療方針
損傷している血管を新鮮化して,再吻合を行う.欠損があれば,静脈移植を行う.術後は抗凝固薬の投与を行う.
(2)前腕部コンパートメント症候群
診断のポイント
多くは小児の上腕骨顆上骨折後に合併するが,高度の圧座損傷・多発骨折でも発生する.主な徴候は,痛み・蒼白・動脈拍動の消失・感覚鈍麻・運動麻痺であり,前腕部は高度に緊満し,患者は耐え難い痛みを訴える.
治療方針
直ちに外科的処置が必要となる.骨折があれば,整復・固定を行い,さらに前腕部での筋膜切開によるコンパートメント内の除圧が必要となる.筋膜切開をしても動脈の拍動が得られず,血管損傷が疑われる場合は血管造影を行い,損傷した動脈の狭窄を解除する.
【2】慢性的末梢循環障害
代表的なRaynaud症候群とBuerger病について記す.
(1)Raynaud症候群(レイノー症候群)
診断のポイント
寒冷刺激や振動刺激で指動脈の攣縮を起こして,手指が蒼白となり,チアノーゼ・紅潮などの症状を繰り返す.膠原病や振動工具の使用,外的刺激などの原因が明らかなものはRaynaud症候群,明らかでないものはRaynaud病と呼ぶ.
治療方針
血管造影(CTアンギオ,MRIアンギオ),サーモグラフィーなどを行って閉塞・狭窄している血管の部位を同定する.原因疾患がある場合は,その治療を行う.多くはまず,薬物療法を行い,血管拡張
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