診療支援
診断

自律神経症状
Autonomic Failure
池田 佳生
(群馬大学教授・脳神経内科学)

緊急処置

【1】高度の起立性低血圧により脳循環不全を生じ,広範な脳領域が低灌流となり失神に至る場合:臥位にて回復体位をとり安静にすることで,比較的すみやかに意識が回復することが多い。背景にある病態が不明な意識障害を呈する患者に対しては,すみやかな神経機能と呼吸・循環評価および気道確保,静脈確保といった呼吸・循環状態の回復を目指した処置を行う必要がある。

【2】高度の排尿障害のため尿閉に至り,尿排泄を認めない場合:尿道カテーテル挿入などにより尿排泄を行う必要がある。

診断のチェックポイント

定義:中枢または末梢の自律神経障害により,呼吸・循環・排泄といった生命維持のために重要な機能の不全状態による症候を総称して自律神経症状とよぶ。そのなかには,呼吸調節機能障害,血圧調節や臓器循環の障害,膀胱・直腸機能障害などがある。臨床的に遭遇する機会が多いのは,起立性低血圧に続発する失神,便秘,下痢,尿失禁(蓄尿障害)や尿閉(尿排泄障害),性機能障害,発汗障害である。

【1】病歴

❶起立や体位変換に伴って,眼前暗黒感,めまい,ふらつきがないか。

❷家庭血圧の低値や高度の変動がないか。

❸排尿や排便の頻度(回数)に異常がないか。

❹勃起不全がないか。

❺睡眠中の無呼吸がないか。

❻汗をかきにくいと感じたり,高体温になることがないか。

【2】身体所見

❶皮膚温に異常があるか。

❷皮膚色の異常や浮腫があるか。

❸皮膚の湿潤度に異常があるか(→発汗異常)。

❹下腹部の膨満があるか(→膀胱充満や便秘)。

【3】検査

❶Schellong試験(起立試験):臥位の状態から能動的に起立する前後の血圧を測定し評価する。3分間の安静臥位の後起立し,続く3分以内に少なくとも収縮期血圧が15~30mmHgの低下を認めた場合に起立性低血圧と判定することが多いが,明確な判定基準はない。起立に伴う代償性の心拍数増加の有無も確認する。自律神経障害では心拍

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