診療支援
診断

反射の異常
Abnormal Findings of Reflex
菅原 正伯
(秋田大学医学部附属病院脳神経内科・講師)

緊急処置

 急性の麻痺,意識障害,解離性障害の診断に反射の診察は有用である。

【1】処置が急がれる疾患としては脳卒中,脊髄梗塞・出血が挙げられる。

【2】意識障害患者の診察においては,四肢の腱反射消失+Babinski徴候陽性は,運動野のBetz細胞を含む広範な大脳皮質機能低下を意味する。バイタルサインの評価と,尿素窒素,クレアチニン,血糖,アンモニア,電解質異常のチェックをする。

診断のチェックポイント

❶患者が反射の異常を主訴として来院することは考えにくい。著しく反射が亢進した状態のクローヌス(足関節背屈,膝関節屈曲で,下肢に律動的なふるえが生じる)は主訴となる可能性がある。

❷意識障害患者や,運動麻痺,運動失調,感覚障害,自律神経障害を訴える患者の診察で反射を評価することになる。

❸患者の協力がなくても反射を診ることができるので,意識障害があっても診察が可能である。また,解離性障害(転換性障害)の診断にも役立つ。

定義

❶腱反射

さまざまな呼び名があり,異論も多いところであるが,神経内科用語集では深部腱反射が採用されている。生理学的には筋伸張反射が正しい。

上位運動ニューロン,下位運動ニューロン,神経筋接合部,筋,反射抑制性介在ニューロンの障害で腱反射の異常が生じる。

使い慣れた打腱器で,正しい肢位で,適切な部位を,打腱器を強くにぎりしめずに手首のスナップを効かせて十分なヘッドスピードで叩打できるように,手技の習熟をはからなくてはならない。日本神経学会が作成した神経診察のDVDがあるので,参考にしていただきたい。

どの反射をみたらいいか:上腕二頭筋反射(C5>C6),腕橈骨筋反射(C5>C6),上腕三頭筋反射(C7),手指屈筋反射(Trömner,Hoffmann;C8<T1),膝蓋腱反射〔L(2)/3/4〕,アキレス腱反射(S1)〔カッコ内は髄節;Clin Neurosci 31(

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