診療支援
診断

急性下痢(1)感染症を中心に
Infectious Acute Diarrhea
髙山 哲治
(徳島大学大学院教授・消化器内科学)

診断のチェックポイント(表1)

定義

❶感染による急性下痢:急性下痢の多くは感染性腸炎によるものであり,細菌やウイルスの感染が多いが,真菌,原虫,寄生虫の感染もある。

❷感染性腸炎の分類:その機序から細菌が腸管粘膜組織に侵入して腸炎(や潰瘍)を起こす組織侵入型,腸内で増殖した細菌が毒素を産生して下痢をきたす感染毒素型(生体内毒素型),経口摂取される前に毒素が産生されている生体外毒素型,の3つに分類される。

❸原因菌:組織侵入型は,サルモネラ菌の一部,赤痢菌,腸管侵入性大腸菌(enteroinvasive E. coli:EIEC)など,感染毒素型は腸炎ビブリオ菌,カンピロバクター,腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic E. coli:EHEC),腸管毒素原性大腸菌(enterotoxigenic E. coli:ETEC)など,生体外毒素型には黄色ブドウ球菌とボツリヌス菌がある。

【1】病歴

❶食事歴:生ものを食べていないか。特に鶏肉(カンピロバクター),魚介類(腸炎ビブリオ),鶏卵や牛肉(サルモネラなど),カキ(ノロウイルス)を食べていないか。

❷下痢の回数

❸腹痛,発熱,悪心・嘔吐の有無

❹発症経過

❺粘血便の有無:腸管病原性大腸菌(enteropathogenic E. coli:EPEC),EHEC,細菌性赤痢,その他(潰瘍性大腸炎,Crohn病,大腸癌など)では粘血便をきたす。

❻血性下痢:腸炎ビブリオ,カンピロバクター,その他(抗菌薬起因性腸炎,虚血性腸炎,EHECなど)。

❼イチゴゼリー状便:アメーバ赤痢に特徴的。

❽米のとぎ汁様便:ロタウイルス腸炎,コレラ。

❾薬物服用歴:抗菌薬,NSAIDs,抗癌剤。

❿海外渡航歴,放射線照射歴。

⓫家族内,同居者に同様の症状を呈する患者の有無

【2】身体所見

❶脱水の有無

❷腹部の聴打診:圧痛の有無と部位,反跳痛や腹膜刺激症状の有無,鼓腸

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