診療支援
診断

腹部の超音波診断
Ultrasonographic Diagnosis of Abdominal Disease
熊田 卓
(岐阜協立大学看護学部教授)

腹部の正常の超音波像

【1】肝臓

❶腹部で最も大きい臓器であり右肋間,肋弓下,心窩部の3方向からの走査によって容易に描出される。

❷肝表面は高輝度の直線として描出され,肝縁は鋭角で,実質は均一に分布する微細なエコースポット(スペックルパターン)と散在する血管の断面から構成される。

❸脈管は門脈枝や肝静脈枝が肝実質内を走行し,肝内胆管枝は2~3次分枝が門脈枝と併走して観察される。

【2】胆道

❶胆囊の形状は卵円形で,大きさは短径で36mm未満,壁厚は4mm未満である。

❷胆管で描出可能な部位は左右肝管と肝門部領域胆管である。遠位胆管も60~80%描出可能である。

❸胆管径は8mm未満(胆囊摘出後は11mm未満)で壁厚は3mm未満である。

【3】膵臓

❶全体をくまなく描出することは困難である。体部以外で腹背径を正確に測定することは難しく個人差も多い。

❷膵実質は全体均一に微細な点状エコーを認める。

❸正常の主膵管は広狭不整のない細い管腔で実質のほぼ中央を長軸に沿って走る。管径の計測は前後2本の膵管壁高エコー部分の腹側面の間を計測する。3mm以上を拡張の目安とする。

【4】脾臓

❶通常,第9肋間からの走査で脾臓の最大長軸像が得られる。

❷横隔膜面は平滑で,臓側面にはいくつかの切痕を認める。

❸内部は微細な粒状エコーからなる。

❹最大径が15cm以上は精査が必要となる。

【5】消化管

❶ルーチン検査として上部では腹部食道→胃上部(胃穹窿部・胃底部)→胃中部(胃体部)→胃下部(前庭部)→幽門輪~十二指腸球部,小腸は上腹部(空腸)→右下腹部(回腸),大腸では上行結腸→回盲部・虫垂→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸の順で走査する。

❷消化管壁の正常値に関しては,各層ごとの測定は一部を除いて一般に体外式では困難なため,胃5mm以下,小腸3mm以下,大腸4mm以下を目安とする。消化管の伸展・収縮により厚さが変化するためである。

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