診断のポイント
【1】高度蛋白尿。
【2】低アルブミン血症。
【3】低アルブミン血症に起因する浮腫。
【4】脂質異常症,血栓傾向。
【5】ネフローゼ症候群は,腎糸球体係蹄障害による蛋白透過性亢進に基づく大量の尿蛋白漏出とこれに伴う低蛋白(低アルブミン)血症を特徴とする症候群である。表1図に診断基準を示す。
緊急対応の判断基準
【1】胸水が貯留し呼吸状態が悪化しているなどの体液過剰が原因で全身状態が悪化している状況や,感染症の合併など,自施設で対処が困難な場合は高次医療機関へ搬送する。
【2】原疾患が不明で腎病理診断が必要な場合は,安易に免疫抑制の治療を開始せずに,確定診断のために腎生検が可能な施設へ紹介する。
症候の診かた
【1】体液過剰(浮腫,胸腹水)
❶主症状である浮腫は,ナトリウム貯留による体液(細胞外液)貯留と低アルブミン血症による血漿膠質浸透圧の低下によると考えられている。
❷浮腫は身体の低圧部である眼瞼部から始まることが多いが,重力により両側下腿や仙骨部に広がり,胸腹水を伴う全身性の浮腫に拡大する。
■下腿浮腫は,圧痕性浮腫が特徴的である。
■男性の場合,陰囊水腫を呈することがある。
■随伴する自覚症状として,頭痛,易疲労感,腹部膨満感,呼吸困難などがある。
■腸管浮腫をきたすと腹痛,食欲不振,下痢などの症状が認められる。
【2】高血圧:ネフローゼ症候群の10~60%の症例で発症時に高血圧を認める。夜間血圧下降が減少しているnon-dipper型日内変動異常を認めることが多い。
【3】尿異常
❶高度の蛋白尿では尿の色調には変化がないが,尿の泡立ちが目立つことがある。
❷低アルブミン血症が高度になると,血管内脱水による急性腎障害に伴って尿量の低下を自覚することがある。
❸糸球体腎炎を伴うネフローゼ症候群では,血尿を合併することが多い。
【4】血栓症症状
❶ネフローゼ症候群では凝固線溶系の異常により,凝固亢進状
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