診療支援
診断

クリプトスポリジウム症・消化器原虫症
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Cryptosporidiosis and other Protozoa-related Gastroenteritis
八木田 健司
(国立感染症研究所・寄生動物部主任研究官)

[Ⅰ]クリプトスポリジウム症・ジアルジア症

診断のポイント

【1】水溶性の下痢,腹痛,衰弱感,栄養障害,体重減少。

【2】潜伏期間が1~2週間。

【3】慢性化,特に免疫不全患者。

【4】海外渡航歴,免疫不全症状(HIV陽性など)や性感染症(sexually transmitted disease:STD)との関連。

【5】託児所,またプールなどレクリエーション用水を介した集団感染との関連。

症状の診かた

【1】下痢

❶数回~10回/日の頻回な下痢で,非血性。

❷健常者の場合は数週間で自然治癒する。

❸免疫不全者の場合は慢性,劇症化し,脱水,強度の体力消耗がみられる。

❹ジアルジア症では脂肪便(腐敗臭がある)をみる。

【2】発熱は多くの場合みられない。

検査所見とその読みかた

【1】糞便検査(顕微鏡検査)

❶シスト(cyst,囊子)の検出

便検体中のクリプトスポリジウムオーシスト,またジアルジアの栄養体あるいはシストを検出する。いずれも大きさが10μm以下であり,生鮮試料で未染色の検査では運動性のあるジアルジア栄養体以外は検出が困難である。

検出の妨げとなる夾雑物を除く効果のあるホルマリン・エーテル法(MGL法)やショ糖浮遊法による試料の粗精製を行うと検出感度は高まる。

❷染色

クリプトスポリジウムオーシストに対しては抗酸染色法を,ジアルジアシストに対してはヨード染色法などが一般的な検査法として用いられるが,特異性が低い。

抗酸染色ではサイクロスポラオーシスト(径10μm)とクリプトスポリジウムオーシスト(径4~5μm)の鑑別が必要である。

これらの染色法では個々の原虫により染色性には差が生じやすいなどの問題があるので,検査所見の読みかたには熟達した経験を要する。

❸免疫蛍光抗体染色

臨床上重要な種類のクリプトスポリジウムおよびジアルジアが検出可能な免疫蛍光抗体試薬(市販研究用試薬)は,オーシスト/シストの周囲

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