診療支援
診断

パラコート中毒
††
Paraquat Poisoning
伊関 憲
(福島県立医科大学教授・救急医療学講座)

診断のポイント

【1】パラコート含有の農薬を経口摂取,または吸入,付着した状況がある。

【2】特有のパラコート臭がある。

【3】吐物や衣服,口腔内に青色の付着物を認める。

【4】口腔,舌,咽頭のびらん,潰瘍,発赤を認める。

【5】尿中パラコート定性検査を行う。尿を水酸化ナトリウムでアルカリ化して,ハイドロサルファイトナトリウム100mgを加えるとパラコートの存在下では青色を呈する(図1)。

症候の診かた

【1】パラコートは細胞内で還元反応により,パラコート・ラジカルとなる。パラコート・ラジカルは酸素により酸化されて,パラコートとなりスーパーオキサイドを産生する。このレドックス・サイクルとよばれる酸化・還元反応が繰り返されて,産生されたスーパーオキサイドにより組織障害が起こる(図2)。

【2】パラコートを大量に服用すると数時間で循環不全により死亡する。服用量が少ない場合は,数日後から肝不全,腎不全,肺水腫など多臓器不全を呈する。さらに1週間後から肺線維症となり,呼吸不全を呈して死亡する。

【3】来院時に意識レベル低下や血圧低下,低酸素血症,代謝性アシドーシスをきたしている場合には死亡する。また来院時に意識があり状態が安定しているように見えても,予後は服用量によって決まるため死亡することが多い。

検査所見とその読みかた

【1】パラコートの定量検査:血液または尿から液体クロマトグラフィなどを用いて測定する。

【2】パラコートの血中濃度と服毒後の経過時間:Proudfootらのノモグラム(図3)から生存予測が行える。

【3】尿のハイドロサルファイト反応:青い呈色反応の濃度を見て,予後を推定することができる(図1)。

【4】クレアチニン値の測定:腎不全の進行は,クレアチニンの上昇で確認する。

【5】肺のX線写真,CT:定期的に撮影し,肺線維症の進行を確認する。

確定診断の決め手

 パラコートに曝露されたことや

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