診療支援
診断

唾液腺腫脹
††
Swelling of Salivary Glands
氷見 徹夫
(札幌禎心会病院・聴覚・めまい医療センター長)

診断のポイント

【1】感染性腫脹か,非感染性腫脹か。

【2】一側性か,両側性か。

【3】唾液腺腫瘍の疾患頻度・症候・検査の特徴を整理しておく。

【4】免疫異常,肉芽腫様病変に起因する非感染性唾液腺腫脹を鑑別する。

症候の診かた

【1】感染性唾液腺腫脹

❶ウイルス性:流行性耳下腺炎(ムンプス)

小児では最も多く,一側から両側の耳下腺が有痛性に腫脹する。咀嚼,嚥下時に疼痛が強い。

成人ではほかの分泌腺の炎症(膵炎,精巣炎,卵巣炎など)が合併することがある。

❷細菌性:急性化膿性耳下腺炎,反復性耳下腺炎

通常一側の有痛性腫大と発熱や皮膚の発赤を伴う。

多くは唾液量の低下,口腔内の衛生状態悪化が起因となる。

【2】非感染性唾液腺腫脹

❶腫瘍性病変

通常は一側性の腫脹で,増大速度,硬さ,可動性,表面の性状を診る。耳下腺両側ではWarthin腫瘍や悪性リンパ腫との鑑別が必要。

疼痛や皮膚発赤,顔面神経麻痺を伴う場合は悪性腫瘍が疑われる。

頻度の高い唾液腺腫瘍は耳下腺良性腫瘍で多形腺腫とWarthin腫瘍が多く,両者で90%を占める。顎下腺,小唾液腺由来の腫瘍は悪性腫瘍の頻度が高い。

❷非腫瘍性唾液腺腫脹

一側性唾液腺腫脹で特徴的な症候を示す疾患

唾石症:顎下腺の一側性,摂食後の発作性腫大,疼痛を伴う。

線維素性唾液管炎:一側性,発作性,反復性,線維素排出で腫脹が軽減される。

両側性唾液腺腫脹で特徴的な症候

Sjögren症候群:多くは耳下腺の両側性,反復性腫大,比較的軟らかい。

IgG4関連涙腺・唾液腺炎:唾液腺の両側性,対称性,持続性腫大,やや硬い。

サルコイドーシス:耳下腺の両側性,やや硬く,軽度の疼痛。

木村病:正確には唾液腺でなく耳下部,顎下部腫大。

検査所見とその読みかた

 検査が重要なのは非感染性唾液腺腫脹。

【1】腫瘍性病変

❶超音波検査,CT,MRIなどで質的診断を進める。

❷画像診断,穿刺吸引細胞診

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