診断のポイント
【1】心不全とは「何らかの心臓機能障害,すなわち,心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」と定義される。
【2】乳幼児期は,多呼吸・発汗・哺乳不良・体重増加不良などの特徴的な症状が主になる。
【3】心不全の重症度評価には,小児ではRoss分類(表1図)が有用である。
【4】心不全の診断では,自覚症状,既往歴,家族歴,身体所見,心電図,胸部X線をまず検討する。
緊急対応の判断基準
【1】症状や徴候が急性に出現している場合は,急性心不全が疑われ,緊急対応を要する。
【2】特に,低血圧・頻脈・呼吸困難・胃腸症状などの症状がある場合は,代償機転が破綻している可能性が高く,すみやかに強心薬や血管拡張剤の経静脈的投与などを検討する。
症候の診かた
【1】低灌流所見(脈圧狭小・交互脈・四肢冷感・傾眠傾向・症状のある低血圧・腎機能低下・低ナトリウム血症の有無)およびうっ血所見(起坐呼吸・肺音ラ音・浮腫・腹水・頸静脈怒張・Ⅲ音聴取・Ⅱ音亢進の有無)が重要である。
【2】Nohria-Stevenson分類(図1図)を用いて,これらの所見に基づいて心不全の病態評価を行い,治療方針の決定や予後判定を行う。
検査所見とその読みかた
【1】心エコー:小児の心不全は原疾患によって治療が異なるため,画像診断が重要である。特に小児において心エコーは解剖学的異常の診断に加え,心機能診断に大きな役割を果たす。
【2】左室駆出率の評価:心不全は左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)が50%以上に保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction:HFpEF)とLVEFが低下した心不全(heart