◆疾患概念
【定義・病態】
全般不安症/全般性不安障害(GAD)は,日常的な多くの出来事または活動に対する過剰な不安と心配(予期憂慮)が持続し,これに伴って運動性緊張や自律神経症状などを呈する疾患である.本疾患は,Freud(フロイト)が唱えた不安神経症の概念を源流とするが,疾患概念としてのGADは比較的新しく,診断基準が明記されたのはDSM-Ⅲ(1980年)以降である.
最新のDSM-5診断基準では,従来のDSMでは容認されなかった「他の精神疾患の経過中に起こるGAD」が,GADとして診断可能となった点が特筆される.これは,それまで残遺的な診断カテゴリーとしての位置付けであったGADが,より独立した疾患として認められたことを意味する.ただし,この点を除けば,基本的にDSM-ⅣのGAD診断基準が踏襲されており,DSM-5での大幅な変更はない.
そもそも不安や心配は,危機的状況に際して生じる健全な心理的反応ともいえる.しかし,GAD患者の抱く不安は広範かつ非現実的であり,長期(6か月以上)にわたって制御不能な状態におかれることが特徴である.また,職業上,生活上に深刻な機能障害をもたらしている点で通常の不安とは区別される.
また,GADはcomorbidityが高い疾患であり,特に気分障害や,パニック障害など他の不安障害,薬物依存などを合併しやすいことで知られる.このcomorbidityの高さは,併存疾患とも共通した何かしらの生物学的基盤の存在を疑わせるが,その病因は多くが未解明なままである.
【疫学・経過・予後】
近年の疫学調査によると,わが国でのGADの生涯有病率は1.8%,12か月有病率は0.9%である.一方,米国の一般市民におけるGADの12か月有病率は成人で2.9%であり,欧州系の人は,非欧州系を祖先とする人に比べ,GADを経験することが多いとされる.本疾患の発症年齢の
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