診療支援
治療

新生児の輸液療法
fluid therapy in neonates
河井昌彦
(京都大学医学部附属病院小児科・病院教授)

 新生児早産児は,体内水分量とりわけ細胞外液量が多く,体液量の調節能に制限があるため輸液療法はきわめて重要である.体液調節能の特徴として,体重あたりの体表面積が大きいうえに皮膚が脆弱なため不感蒸泄が多いこと,腎機能とりわけ腎尿細管機能が未熟なため尿濃縮・電解質の再吸収能に乏しいことがあげられる.加えて,出生後早期は抗利尿ホルモンの分泌促進のため尿量が乏しいが,生後1~3日で利尿期に入るなど日齢に伴って尿量が大きく変動する.

 以上の理由から新生児の輸液療法は,生後日齢・児の成熟段階に応じて調節することが求められる.

A.輸液療法の適応

 a)経口哺乳が不十分なために血糖値・電解質(Ca,Na,Kなど)が維持できない場合

 b)消化管疾患その他の児の病態のため,経口哺乳を制限せざるを得ない場合

B.輸液療法の目的

 体液水分量の維持・血糖値および電解質(Na,K,Ca,P)の維持が基本となる.

 極低出生体重児・消化管疾患など数日以上にわたって経口哺乳が期待できない場合は,経静脈栄養を開始する必要があるが,栄養輸液に関しては「新生児の静脈栄養」()を参照.

C.輸液療法の実際

1.投与水分量

 出生当日は60~70mL/kg/日で開始し,日齢・体重変化に応じて漸増するのが基本.ただし子宮内発育遅延児・開放型保育器での管理や光線療法中は10~20%程度多めにする.一方,呼吸状態が不安定な児や,動脈管開存が問題となるような児では10%程度少なめに管理することが多い.

2.糖投与速度

 新生児のブドウ糖利用は3~5mg/kg/分とされているため,GIR(glucose infusion rate)を3~5mg/kg/分で開始し,65mg/dLの血糖値が維持できるよう調節する.なお,極低出生体重児など積極的な栄養(aggressive nutrition)を目指す場合は,高血糖にならない程度にGIRを上げ

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