診療支援
治療

百日咳
Bordetella pertussis
神谷 元
(国立感染症研究所感染症疫学センター第一室・主任研究官)

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[感]百日咳:5類 [学]百日咳:2種(特有の咳が消失するまで,または5日間の適切な抗菌性物質製剤による治療が終了するまで)

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治療のポイント

・最も感染力があるのは発症後2週間.ただし適切な抗菌薬投与が開始された場合,5日経過すれば感染性は失われる.

・百日咳は感染力が強く,予防接種を受けていない家族内接触者の90%が感染するため,百日咳患者を診断した場合,重症化のリスクが高い(生後3か月未満のワクチン未接種者など)濃厚接触者にも注意が必要である.

・百日咳含有ワクチン(DPTまたはDPT-IPV)を必要回数接種している児でも,学童期になるとワクチン効果が漸減し,百日咳に感染することがある.

●病態

・百日咳菌(Bordetella pertussis)により生じる急性気道感染症で,エアロゾルによる飛沫感染で伝播する.

・百日咳菌の症状は菌が産生する毒素によるものと考えられている.典型的な症状は,感冒様の上気道症状で始まり,次第に咳嗽が増え,吸気性笛声(whoop)を伴った発作性咳嗽が持続する.発熱は目立たないがしばしば咳嗽後の嘔吐を認める.

・3か月未満の乳児では発作性咳嗽による無呼吸やチアノーゼを認め,死亡を含む重症化例が多い.

・年長児や成人ではワクチン接種歴や自然感染歴により症状が異なるが,典型例は少なく診断が難しいため,家族内発症者や地域の百日咳流行具合を参考にする.

●治療方針

 患者からの菌排出は咳の開始から約3週間持続するが,適切な治療により服用開始から5日後には,菌の分離はほぼ陰性となる.

 迅速で特異性の高い検査法として百日咳菌LAMP法が開発され,2016年11月より保険適用となった.2018年1月1日より百日咳は5類

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