診療支援
治療

コレラ
cholera
堀越裕歩
(東京都立小児総合医療センター感染症科・免疫科・医長)

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[感]3類 [学]3種(病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで)

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●病態

Vibrio choleraeによるグラム陰性桿菌の細菌感染症で,主に衛生状態が整っていない開発途上国を中心に発生し,日本ではまれに輸入例がある.

・菌に汚染された水や食事を介して感染し,潜伏期間は数時間から数日である.無症候性から症候性まであり,主な症状は水様性下痢(米のとぎ汁様),嘔吐をきたす.

・コレラ毒素が小腸で分泌性下痢を引き起こし,大量の水分と塩素などの電解質を急激に喪失させ,脱水症による重症化や死亡がみられる.未治療では死亡率50~70%だが,治療を行えば死亡はまれである.

・一般に細菌性腸炎にみられるような発熱,腹痛,テネスムス,血便は呈さないことが多い.

・WHOが診療手引きを出しており,コレラワクチン(日本未承認)にて予防可能である.

●治療方針

 蔓延国やアウトブレイク地域への渡航歴を確認する.便培養で確定診断するが,治療はほかの胃腸炎と同様に脱水症の補正が最も予後改善に重要である.抗菌薬は,下痢の期間や排菌量を減じる効果があり,内服可能になった段階で投与する.地域によって耐性菌が問題となっており,罹患地域での感受性パターンを参考にする.

A.軽症例

 経口補水液(ORS:oral rehydration solution)で水分と電解質を十分に補充させる.嘔吐がなければ食事を再開し,母乳栄養児は母乳を継続する.

B.中等症以上

 静脈路を確保して点滴をリンゲル液などで開始する.脱水の評価に応じ,重症例では30分で30mL/kgの投与を行い,次の4時間で100mL/kg,引き続き20時間で100mL/kgを目安に補液

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