治療のポイント
・重篤で生命予後にかかわる疾患である.
・真菌の種類,感染部位により最適な治療薬,治療期間を決定する.
・予防内服中に発症した深在性真菌感染症の経験的治療には,原則,異なる系統の抗真菌薬を選択する.
・腎毒性や免疫抑制薬との相互作用など,抗真菌薬がもつ副作用に注意する.
・感染症専門医や関連外科へのコンサルトを早めに行う.
●病態
・小児診療で遭遇する深在性真菌感染症の多くは,早産児や先天性および後天性免疫不全(血液悪性腫瘍や移植など)をもつ患児に起こる.
・病態にかかわる危険因子を以下にまとめる.
a)皮膚のバリア障害
b)中心静脈栄養・腸管機能不全
c)外科手術とそれに伴う人工物の使用
d)好中球減少症・食細胞機能不全
e)細胞性免疫不全
f)広域抗菌薬の長期使用
・血液などの無菌部位や組織からの培養で真菌が検出されれば確定診断となるが,生検病理組織で深在性真菌感染症の診断がつくこともある.補助診断法として画像や血清学的診断も用いられるが,これらを含めた診断のポイントは成書に譲る.
・真菌の薬物感受性は多岐にわたる.アムホテリシンBなどの広域抗真菌薬は一定の頻度で重い副作用があり,不必要な長期投与は避けたい.このような観点から患児の容体が許す限り,気管支肺胞洗浄液の採取や組織生検など侵襲的検査も含めて確定診断できるよう,最大限の努力が必要である.検出された真菌は原則,菌株の同定と薬物感受性試験を行う.
・広範な深在性真菌感染症の治療のなかでも,本項では特に新生児カンジダ症,カンジダ症,侵襲性アスペルギルス症,その他の糸状菌による深在性真菌症の4つの病態を解説する.
●治療方針
カンジダ症を疑った場合は,必ず治療開始前に追加で血液培養を2セット以上採取する.経験的治療薬は臨床診断により決定してよい.必要最小限と思われる抗真菌薬を表1図にまとめた.一般に真菌は発育が遅いため,菌株の
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