●病態
・小児の肥大型心筋症(HCM)の原因は多様であり,特発性のほか代謝異常,症候群,神経筋疾患など全身疾患に関連するものが含まれる.
・心室壁の肥厚による拡張障害が病態の基本であり,肺うっ血・低心拍出量・心筋虚血による症状(労作時呼吸困難,易疲労,失神,胸痛など)を呈する.
・左室流出路狭窄の有無により閉塞性HCMと非閉塞性HCMに大別され,右室流出路狭窄の合併にも注意する.拡張相HCMに移行する例がある.
・合併症として不整脈,血栓塞栓症,感染性心内膜炎が重要であり,心室不整脈による運動時突然死が起こりうることに留意する.
・日本のガイドラインとして日本循環器学会「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」と日本小児循環器学会「小児期心疾患における薬物療法ガイドライン(2012)」がある.
●治療方針
特異的治療法(酵素補充療法)がある二次性HCM〔Fabry(ファブリー)病,Pompe(ポンペ)病〕は鑑別しておく.治療の基本は,心機能改善と症状軽減,合併症予防,生命予後改善であり,生活指導,薬物療法,非薬物療法を含めた総合的管理が重要となる.
A.閉塞性HCMの場合
1.生活指導
症状の有無にかかわらず,脱水や過剰な運動を避け,肥満に注意するよう指導する.症状がある場合は,中等度ないし強い運動を制限する(学校生活管理指導区分CまたはD).
2.薬物療法
Px処方例 まずβ遮断薬として喘息の既往がない場合には➊を,喘息の既往がある場合には➋を用いる.β遮断薬の効果が十分でない場合,Ⅰa群抗不整脈薬である➌の追加で圧較差の改善が期待される.年長児の場合はβ遮断薬にカルシウム拮抗薬である➍の追加も選択肢であるが,循環破綻に注意する.
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