治療のポイント
・心症状以外にも腹痛・神経症状が前面に出ていることが多い.
・診断を疑った場合は専門施設に直ちに搬送する.
・循環破綻をきたす前に早期診断・早期治療介入を行う.
・集中治療介入,ECMO導入を躊躇しない.
・生命の危険,合併症が伴う可能性を両親に説明する.
●病態
・主にウイルス感染に伴う,心筋の急性炎症による急性心ポンプ不全が病態である.
・通常,先行して感冒症状・不定愁訴があることが多いが無症状の場合もある.初期症状としては循環不全症状よりも発熱・筋肉痛・全身倦怠感などが主体となり,特に消化器症状(食思不振・悪心・嘔吐)が多い.引き続き循環不全症状(蒼白・発熱・頻脈・胸部不快感・胸部痛・不整脈・低血圧・失神など)があり,診察では末梢循環不全・脈拍微弱・下腿浮腫・頸静脈怒張・奔馬調律・湿性ラ音などの循環不全徴候を認める.
・急性心筋炎のなかで心肺危機に陥るものを劇症型心筋炎といい,機械的心肺補助療法(ECMO:extra-corporeal membrane oxygenation)を含めた侵襲的治療が必要となる.
・心筋炎の診断は症状に加えて,何らかの心電図異常(心室伝導障害・ブロック・ST-T異常など)・心エコー図の局所的あるいはびまん性に壁肥厚や壁運動低下・血清中の心筋構成蛋白異常(心筋トロポニンT・CK-MB)・ウイルスPCR検査(咽頭スワブ・尿・糞便・血液・心筋生検組織など)により確定する.小児においては既往症がなければ虚血性心疾患は除外してよい.
●治療方針
現時点では心筋炎に対する根治療法は存在しない.最も重要な急性期管理は,心筋炎による血行動態の破綻を早期検知し,対症療法にて循環の破綻を回避することである.
A.無症状・軽微徴候例の場合
急性心筋炎が病態と考えられる場合は時間経過で病態が急激に悪化することがあり,ベッド上安静・ECG-SpO2モニタリングで経過観察
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