診療支援
治療

心膜炎,心タンポナーデ
pericarditis,cardiac tamponade
森 善樹
(北里大学寄附講座小児-小児循環器地域医療学・准教授)

Ⅰ.心膜炎

●病態

・経過から急性と慢性心膜炎に,原因から感染性と非感染性に分類される.

・原因が判明したものではウイルスによる感染性が最も多い.それ以外では細菌,真菌によるものがあり,最も多いと報告されている特発性心膜炎はウイルス感染が原因と推定されている.

・非感染性の原因としては膠原病,リウマチ熱,川崎病,悪性腫瘍,心膜切開を含めた外傷,心筋梗塞後〔Dressler(ドレスラー)症候群〕,薬剤性などがある.

・2015年,欧州心臓病学会からガイドラインが公表された.

●治療方針

 基礎疾患が診断されれば,その治療が基本となる.安静が望ましく,成人では運動は症状が完全に改善かつ検査所見が正常化(アスリートでは発症後3か月頃)するまで制限するが,小児では制限の必要はないとされる.

A.急性ウイルス性心膜炎(特発性心膜炎)

 心筋炎とともに起こることがあり,その場合は心筋炎の治療に準ずる.心膜炎としては自然治癒が見込まれる.胸痛などの症状に対しては非ステロイド性抗炎症薬が原則で,ステロイドは第1選択薬にはならない.

Px処方例 ➊または➋を用いる.➌は併用する.➍は非ステロイド性抗炎症薬➊➋が無効か再発例にのみ用いる.

➊アスピリン末 1回10~15mg/kg 1日4~6回(最大1日4.5g)

➋ブルフェン顆粒 1回10mg/kg(成分量として) 1日3~4回(最大1日2,400mg)

➌コルヒチン錠 1回0.005~0.01mg/kg(成分量として) 1日1~2回(最大1日0.03mg/kg,1.5mg)

➍プレドニン錠 1回0.5~1mg/kg 1日2回(最大1日60mg)

B.急性細菌性(化膿性)心膜炎

心嚢穿刺が診断と治療に必須である.起炎菌が判明するまでブドウ球菌,インフルエンザ桿菌,肺炎球菌が多いことを念頭におき,抗菌薬治療を開始する.抗菌薬のみでは効果が不十分なことがしばしばで,心膜

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