治療のポイント
・乳児期の鉄欠乏性貧血は,ほとんどが母乳栄養児である.
・自覚症状に乏しい疾患であることを念頭におく.
・規則正しく鉄剤を服用していない可能性が意外に多い.
・Helicobacter pylori感染症の家族歴を確認する.
・輸血は原則施行しない.
●病態
A.病態
・鉄欠乏性貧血は,鉄の需要と供給のバランスが負に傾き,鉄欠乏が最も進行した状態である.
・鉄欠乏が起きるとまず貯蔵鉄が減少し,その次の段階として血液中の鉄の減少,そして組織中の鉄の減少が生じ,その後徐々に貧血が進行する.
・血清フェリチンは貯蔵鉄を反映して鉄欠乏状態の初期の段階で減少するので,鉄欠乏性貧血の有用な指標である.
B.リスク因子
・思春期と乳児期後期に頻度が高い.
・低出生体重児や早産児.母親からの鉄の移行が少なく4~5か月からみられる.
・完全母乳栄養児(鉄含有量が少ない)で離乳食の進みの悪い児.
・スポーツによる鉄欠乏性貧血:長距離走・マラソン,バスケットボール,バレーボール,減量が必要な女子体操,レスリング,フィギュアスケートなど.
・H.pylori感染症.
・牛乳多飲(600mL/日以上)の乳幼児(牛乳貧血).
C.診断
・鉄欠乏性貧血では,小球性低色素性貧血で血清鉄の低値,総鉄結合能の上昇(360μg/dL以上),血清フェリチンの低下(12ng/mL以下)およびトランスフェリン飽和度(血清鉄/総鉄結合能)の低下(16%以下)が認められる.
・特にフェリチンは早期から低下しており,貧血検査をするときは必ず検査項目に加える.一方,感冒などで軽度の炎症があるだけで上昇するので,評価には気をつける必要がある.
●治療方針
A.薬物治療
1.経口薬
鉄剤は原則経口投与である.
乳幼児では,ピロリン酸第二鉄(インクレミン)またはクエン酸第一鉄ナトリウム(フェロミア)を3mg/kg/日で投与する.
思春期では,胃酸に関係なく食後
関連リンク
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