診療支援
治療

動悸
palpitations
大嶋清宏
(群馬大学大学院教授・救急医学)

治療のポイント

・動悸は心悸亢進とも表現され,通常自覚しない心臓の鼓動を不快に感じる症状の総称である.

・動悸は,成人患者のプライマリ・ケア領域で最も一般的な症状の1つで,緊急度,重症度や原因もさまざまである.

・動悸の原因については,以下に述べるような系統的アプローチで診断する.

◆病態と診断

・動悸の診察で最も重要な点は,その原因が致死的となりうるか否かを見極めることである.そのために,以下のACを迅速かつ的確に実施し,特に急性冠症候群,急性大動脈解離,肺血栓塞栓症や不整脈を伴う急性心不全を見逃さないようにする.

A詳細な病歴聴取

・詳細な動悸の特徴(その性状や脈不整の有無など)を聴取する.随伴症状(息切れ,呼吸困難,失神など)を有する場合,心疾患を念頭におく.

B身体診察とバイタルサイン確認

・胸部聴診では特に心雑音の有無に注意する.眼瞼結膜での貧血所見,甲状腺腫大や全身の浮腫の有無も確認する.

・病歴聴取不可な状態であれば,まずバイタルサインの確認および全身観察を行い,全身状態安定に努める.

C検査

・12誘導心電図検査:動悸を訴えるすべての患者に12誘導心電図検査を実施すべきである.本検査は,不整脈や急性冠症候群など,治療介入を要する病態が動悸の原因となっているか否かの判別に,簡便かつ有用である.

・胸部X線検査:心拡大,肺うっ血や胸水貯留の有無に加え,急性の大動脈解離や肺血栓塞栓症の補助診断に有用である.

・血液検査:血算生化学検査や動脈血ガス分析に加え,必要に応じて,心不全のバイオマーカーであるBNPやNT-proBNP,心筋マーカーであるトロポニン,線溶系分子マーカーであるDダイマーを測定する.心房細動・粗動がみられる場合には甲状腺機能検査も行う.

・心臓超音波検査:心機能,心臓内部や心嚢液貯留の評価に有用である.

D鑑別診断

・以下に,動悸の原因に関する鑑別診断を挙げる.

1)循環器系:心

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