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GL新版 急性中毒標準診療ガイド(2023)
ニュートピックス
・COVID-19の世界的流行により,メタノール含有手指消毒液が販売されていた国で,代用飲酒として摂取したメタノール中毒が多数報告された.
・2023年1月,インドネシアでエチレングリコールが混入した咳止めシロップにより300人以上が死亡し,WHOから警告を受けた.
・日本中毒学会より新版 急性中毒標準診療ガイドが2023年に発刊された.
治療のポイント
・アルコールによる中毒では,アルコール種の同定とその代謝産物を正しく把握することが治療に直結する.
・エタノールは,アルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドに,アルデヒド脱水素酵素により酢酸に,最終的に水・二酸化炭素に分解される.
・有毒アルコールであるメタノールは,同様の過程でホルムアルデヒド,ギ酸へと分解されるが,これらは親物質のメタノールより6倍ほど強い毒性を現す.
・同様にエチレングリコールは,グリコールアルデヒドからグリコール酸,さらにシュウ酸に分解され,生体に毒性を現す.
・有毒アルコールは,親物質よりも代謝物質が毒性を現すため,生体内での分解をエタノールないしホメピゾールで抑制し,未分解の状態で血液浄化を実施することが治療のゴールドスタンダードである.
◆病態と診断
Aメタノール
・工業用品の溶媒,ガソリン添加物などに用いられる.途上国ではかつて酒類に混入され,集団中毒の原因にもなった.
・摂取後0.5~6時間内では,悪心・嘔吐・腹痛など消化器・膵炎症状や,酩酊・傾眠・錯乱などの中枢神経症状をきたす.メタノール代謝前であり,実測浸透圧-予測浸透圧(2Na++グルコース/18+BUN/2.8)で示される浸透圧ギャップの開大を認める.
・摂取6時間後以降,ギ酸濃度の上昇とともにアニオンギャップ開大性アシドーシスが顕著となる.視神経乳頭・神経網膜後部の障害に伴う