治療のポイント
・予防,早期発見と治療が重要である.
・予防においては妊婦への啓発活動も必要となる.
・治療・管理に際して母体への影響と胎児・新生児への影響を考慮する.
・病原体により胎児・新生児への影響は大きく異なる.
・病原体によっては早産,低出生体重,発達障害,流死産の原因となる.
Ⅰ.トキソプラズマ症
◆病態と診断
・猫の糞や加熱不十分な肉に含まれる原虫が原因で,母体は無症状か軽微な症状にとどまり,一般に再感染はない.妊娠初期の感染では流死産や発達障害の,その後も児の網脈絡膜炎の原因となりうる.妊娠中は素手で土を触らず,野菜や果物はきちんと洗い,食肉は十分に火を通すといった対応が感染リスクを減らす.
・血清学的検査で診断するが,IgMの偽陽性・持続陽性例もあり,保険適用外のIgG抗体のavidity(親和性)を感染時期推定に用いることがある.
◆治療方針
初感染妊婦への早期スピラマイシン投与は胎児感染を半分以下におさえる.スピラマイシンの胎盤通過性は低く,胎児感染例はピリメタミンとスルファジアジンでの治療を考慮するが,国内未承認であり,専門医療機関に紹介する.
Px処方例
スピラマイシン薬錠 1回300万IU 1日3回 分娩まで
Ⅱ.パルボウイルスB19
◆病態と診断
・母体が感染すると約1/4が経胎盤感染し,うち20%程度で胎児貧血や心筋障害の結果,胎児水腫(30%程度は自然緩解)や流死産を起こす.妊娠28週以降の感染での胎児の症候性感染は少ない.重症胎児貧血に対しては胎児輸血を検討する.小児では感冒様症状で発症し,約1週間で特徴的発疹が現れるが,感冒様症状の時期に飛沫感染や接触感染で母体に感染する.
・母体の自覚症状は関節痛などにとどまり,感染に気づかない妊婦も多い.一般に再感染はない.
・保険適用のある診断検査は特異的IgM抗体測定のみである.
◆治療方針
ワクチンや治療薬はなく,流行中に子ど
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