診療支援
治療

妊娠と感染症
infectious diseases during pregnancy
出口雅士
(神戸大学大学院特命教授・地域医療ネットワーク学)

治療のポイント

・予防,早期発見と治療が重要である.

・予防においては妊婦への啓発活動も必要となる.

・治療・管理に際して母体への影響と胎児・新生児への影響を考慮する.

・病原体により胎児・新生児への影響は大きく異なる.

・病原体によっては早産,低出生体重,発達障害,流死産の原因となる.

Ⅰ.トキソプラズマ症

◆病態と診断

・猫の糞や加熱不十分な肉に含まれる原虫が原因で,母体は無症状か軽微な症状にとどまり,一般に再感染はない.妊娠初期の感染では流死産や発達障害の,その後も児の網脈絡膜炎の原因となりうる.妊娠中は素手で土を触らず,野菜や果物はきちんと洗い,食肉は十分に火を通すといった対応が感染リスクを減らす.

・血清学的検査で診断するが,IgMの偽陽性・持続陽性例もあり,保険適用外のIgG抗体のavidity(親和性)を感染時期推定に用いることがある.

◆治療方針

 初感染妊婦への早期スピラマイシン投与は胎児感染

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