病態
水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の初感染で水痘になり,水痘が治ったあと,ウイルスはDNAの形で脳神経,脊髄神経の後根神経節,腸神経を含む自律神経の神経節の核内に一生涯潜伏する.時間的経過に伴って,VZV特異的T細胞数の減少が起こり,自発的にまたはさまざまな誘因後に再活性化し,ウイルスが増殖し,神経を伝わって神経や皮膚に炎症を起こすと帯状疱疹になる.
【頻度】①水痘は従来9歳までにほとんどの者が罹患していたが,2014年からの水痘ワクチンの定期接種により定期接種対象年齢を中心に患者数が大幅に減少している.接種した者でも水痘に罹患することがあるが,軽症である.②帯状疱疹の発生率は年間4.15人/1,000人で,20~30歳代に小さなピークがみられ,50~60歳代に大きなピークがみられる.近年ワクチンの定期接種により水痘が減少したため,子育て年代の40歳代も特に増加してきている.80歳までに日本人の約3人に1人がかかるといわれている.
【病因・発症機序】VZVの感染により発症する.帯状疱疹は,加齢による細胞性免疫(特にVZV特異的T細胞)の低下によることが多いが,過労やストレス,糖尿病,腎障害,悪性腫瘍,膠原病などの罹患で発症することが多い.疾患別にみると,骨髄移植後,ヒト免疫不全ウイルス感染者,悪性リンパ腫に多い.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】丹毒,蜂窩織炎,接触皮膚炎,単純ヘルペス感染症,虫刺症.
【問診で聞くべきこと】皮疹が出現する前に疼痛がみられたか,初めの発疹の状態および経過を聞く.基礎疾患の有無,過労状態であるか,水痘の既往,水痘ワクチン・帯状疱疹ワクチン接種の有無も聞く.
【臨床症状からの診断】帯状疱疹は体の左右どちらかの部分で神経痛様の痛みが4~5日続いたあとに,浮腫性紅斑が感覚神経に沿って帯状にまたは島嶼状に現れる疾患である.次第に水疱を形成し,膿疱,痂皮となっ
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