基準値
・血清:4倍未満
・髄液:1倍未満
測定法 CF,NT
目的 ポリオウイルス感染の診断.ただし現在,受託検査会社はない(2022年6月現在)
Decision Level
●高値
[高頻度]急性灰白髄炎(ポリオ),不全型ポリオ(かぜ様症状),非麻痺型ポリオ(髄膜刺激症状),麻痺型ポリオ(弛緩性の筋麻痺) [対策]必要に応じウイルス分離を行う
異常値のでるメカニズムと臨床的意義
ポリオウイルスは,ピコルナウイルス科エンテロウイルス属に属するエンベロープを欠く,直径28nmのRNAウイルスである.
血清学的に1~3型に分けられるが,臨床症状の差はない.ポリオウイルスは,ヒトに経口感染し,経口的に侵入したウイルスは咽頭や腸管上皮で増殖する.その他,扁桃腺やパイエル板など局所リンパ節で増殖し,血流中に入りウイルス血症を起こす.やがてウイルスは,中枢神経系の主に運動神経細胞に感染し,増殖する.その結果,神経細胞機能が破壊され,四肢麻痺が起こる.
かつてポリオは世界的に発生したが,生ワクチンが開発され導入した国々では患者発生が劇的に減少した.わが国では1961年より,経口ポリオワクチン(Sabinワクチン)の生後3~48カ月(生後3~18カ月に行うのが望ましい)の乳幼児に対する投与が開始されたため,患者数は激減し,1980年の1型ポリオ患者発生を最後に報告がみられていない.2000年にはポリオ根絶が国際的に認められた.WHOによりポリオの地球上根絶計画も推進されているが,野生株による流行発生国もあるため,ワクチン接種は重要である.また,わが国では2012年に生ポリオワクチンの定期予防接種が中止され不活化ワクチンが導入された.
[関連する検査]
①必要に応じてウイルス分離,遺伝子検出が行われる.②髄液検査で細胞数増加,蛋白増加などがみられる.
判読
①ペア血清による中和抗体の4倍以上の上昇があれば有意で
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