診療支援
検査

胸水   180点
pleural effusion
須藤 英一
(国際医療福祉大学教授・呼吸器内科学)

基準値 胸水は正常では少量しか存在せず,採取できないので,基準値は不明


測定法 打聴診所見やX線所見を参考に,超音波ガイド下にて胸腔穿刺により採取する.まず患者を座位にし,穿刺側の上肢を頭上へ挙げ肋間腔を広くする.穿刺部位をアルコールで消毒し,1%塩酸プロカインで胸壁全層の浸潤麻酔を行う.穿刺部位の肋骨上縁に沿って穿刺する(肋骨下縁には肋間動静脈と神経が走っているため損傷しないように注意する).針先が胸膜を破ると,特有な抵抗を感じ胸腔内に入る.注射器内筒を引いて深さを加減しながら液を採取する.排液は徐々に行い,1回1,000mLは超えないようにする.大量排液の場合には1分間に30mLぐらいの速さで行う.なお,試験穿刺のみの場合は局所麻酔は省略してもよい


検体量 多量であるほど好ましい(最低3~10mL必要)


日数 3~28日(測定項目により日数は異なる)


目的 疾病の診断や病態の判定に重要な情報の提供


Decision Level

■外観,におい

●血性:血清ヘマトクリット値を測定し,末梢血の50%以上であれば血胸と判断する

[高頻度]癌性胸膜炎,血気胸 [可能性]肺塞栓,胸腹部大動脈瘤破裂,良性アスベスト関連胸水,肝癌破裂

●白濁:2,000rpm×10分遠沈後上清白濁

[高頻度]乳び胸 [乳び胸の原因]胸管などのリンパ路の損傷ないし閉塞,悪性リンパ腫,リンパ脈管筋腫症 [可能性]コレステロール胸水

●膿

[可能性]膿胸

●緑色

[可能性]胆汁性胸水

●悪臭

[可能性]嫌気性菌

■細胞分画

●リンパ球増加

[高頻度]結核性胸膜炎,癌性胸膜炎

●好酸球増加

[高頻度]寄生虫疾患 [可能性]結核性胸膜炎の吸収期,気胸後の代償性胸水

■生化学的検査

 ①胸水蛋白/血性蛋白>0.5

 ②胸水LD/血清LD>0.6

 ③胸水LD/血清LDの正常上限×2/3

 ①と②がカットオフ値に近い場合は漏出液と滲出液の両方を含めて検討する(表2

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