診療支援
検査

細菌性赤痢
古川 恵一
(国保旭中央病院・感染症センター長)

病態

・東南アジア,アフリカなど国外感染例が多い(70%).日本国内の集団感染事例もあり,2021年には計7例報告.

・人から人へ比較的少量の菌で結腸に感染し,糞便中の菌で汚染された飲食物の経口摂取から感染する.

・通性嫌気性グラム陰性桿菌で腸内細菌科に属する.日本では2010~2021年の間に検出された赤痢菌739例のうち,Shigella sonnei(D群赤痢菌・ゾンネ赤痢菌)が最も多く(73%),比較的軽症例が多い.次いでS. flexneri(B群赤痢菌・フレクスナー赤痢菌)が多い(23%).S.  dysenteriae(A群赤痢菌・志賀赤痢菌)は重症になりうるが日本では少なく(0.7%),S. boydii(C群赤痢菌・ボイド赤痢菌)も少ない(2.6%).

・潜伏期は1~7日(平均2日)で結腸に感染する.

・症状は全身倦怠感,食欲低下,腹痛(70~93%),粘液下痢便(70~85%),血便(35~55%),水様性下痢便(30~40%),発熱(30~40%),嘔吐(35%),テネスムスなど.合併症は,脱水,Reiter症候群,溶血性尿毒症症候群,直腸炎,中毒性巨大結腸症,腸閉塞,結腸穿孔,劇症中毒性脳症(疫痢:痙攣,意識障害など),反応性関節炎など.

・免疫不全がない人は,多くは7日間で自然に軽快する.

・抗菌薬治療により,症状の続く期間と便中排菌の期間が短縮する.抗菌薬治療を行わないと排菌は7日~6週間続く.


異常値

・便培養 陽性

・血液培養 陽性例はまれである

・白血球 増加

・貧血

・生化学的検査 電解質異常,腎機能障害など


経過観察のための検査項目とその測定頻度

・血液検査 週2~3回

・便培養検査


診断・経過観察上のポイント

①症状のある感染者には,二次感染を防ぐためにも全員抗菌薬治療を行う.ニューキノロン(レボフロキサシン,シプロフロキサシンなど),アジスロマイシン,第3世代セファロ

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?