病態
経口的に摂食した食物を原因とする外因性障害であり,消化器系のみでなく,循環器系や神経系に症状がでるものもある.食物自体に含まれる自然毒食中毒と細菌性食中毒に大別されるが,本項では自然毒中毒の代表であるキノコ中毒,トリカブト中毒,フグ中毒,フグ以外の魚中毒,貝毒中毒について解説する.細菌性食中毒は「感染症,寄生虫疾患」の各項を参照→
異常値
■キノコ中毒
キノコの種類により全く異なった毒性をもっている
●タマゴテングダケ,ドクツルタケなど 有毒成分はアマトキシンであり,熱に強く,いかなる調理法でも分解されない.全キノコ中毒死の90%を占め,死亡率は50~90%である.0.1mg/kgの摂取で死に至る.摂食後8~12時間で下痢,嘔吐などの激しい消化器症状で発症する.この時期の大量の体液喪失によるショックと電解質異常を乗り越えると,1~2日後から劇症の肝不全を生じる.アマトキシンはラジオイムノアッセイが開発されているが,24時間以上経過すると,血清中および尿中の検出は不可能となる.定性試験(Meixner法)でキノコがアマトキシンを含む可能性を推測できる
●その他のキノコ
・他のキノコはアマトキシンに比べて毒性が低く,多くの毒キノコが摂食後3時間以内に軽度~中等症の嘔吐や下痢など消化器刺激症状を呈する
・ワライタケ,シビレタケなどの毒成分はシロシビンであり,LSD様の幻覚作用が特徴である.マジックマッシュルームとしての濫用が問題となり,2002年6月より麻薬原料植物として指定され,栽培,所持,使用が政令で禁止された
・テングダケやベニテングダケ毒成分はイボテン酸とムシモルであり,ムシモルは抑制性神経伝達物質GABA受容体の刺激作用のため,せん妄や幻覚を生じる.同時に抗コリン作用による副交感神経遮断症状を呈する
・アセタケの毒成分はムスカリンであり,発汗,唾液分泌過剰,縮瞳などの副交感神経刺