診療支援
治療

動悸
palpitation
岩田充永
(名古屋掖済会病院・副救命救急センター長)

A.ER診療のポイント

●動悸とは,心臓の鼓動を不快感を伴って自覚する状態である.

●病歴聴取で動悸の起こり方や持続を確認する.

●バイタルサインを確認し循環動態を把握する.

●原因検索のためには12誘導心電図が必須である.

●動悸の原因として,不整脈が重要であるが,非不整脈性の心疾患や非心原性疾患が原因であることも多い.

●洞性頻脈の場合は原因検索が重要である.

●不整脈を認めた場合は,不整脈による症状なのか,基礎疾患によって不整脈をきたしているのかを考える.


B.最初の処置

1病歴聴取

1動悸の性状 動悸について性状を聴取し,「たまにドキンとする」という場合は期外収縮を,「ずっとドキドキした」という場合は頻脈を示唆する.

2発症状況 頻脈を疑う場合は発症様式を聴取して,「突然発症」の場合は何らかの不整脈(心房細動,心房粗動,発作性上室性頻拍,心室頻拍など)が示唆され,「発症時がはっきりしない(いつの間にか出現)」の場合は洞性頻脈が示唆される.

3随伴症状 呼吸困難,胸痛,失神を合併する場合は緊急性が高い.

4内服薬 すべての薬剤について使用状況を確認する.頻用される薬剤としてテオフィリン(テオドール®,テオロング®,スロービット®,ユニコン®)やβ刺激薬などは頻脈による動悸をきたすことがあり,β遮断薬やジギタリス製剤ジゴキシン(ジゴシン®),メチルジゴキシン(ラニラピッド®),ドネぺジル(アリセプト®)などは徐脈をきたすことがある.頻度は高くないが,アンフェタミン中毒,抗精神病薬による悪性症候群,セロトニン症候群などは重症化する危険が高く,疑わないと診断できないため要注意である.

2バイタルサイン確認と身体診察

①頻脈か徐脈か,規則正しいか,血圧低下はないか,体温異常などを念頭にバイタルサインを迅速に確認する.循環動態の把握を目的に,迅速な身体診察を行う.

②呼吸数増加(呼吸困難),ショッ

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