A.疾患・病態の概要
●嫌気性菌(anaerobe)感染症は,酸素が少なく酸化還元電位が低い環境にある局所(いわゆる嫌気環境)で成立する.たとえば,酸化還元電位の低下は,挫滅組織,異物の存在,血流障害などのある部位で認められるが,好気性菌感染によっても低下する.好気性菌感染により局所の嫌気状態が生じ,ここに嫌気性菌が感染して混合性感染の病態になる.これは嫌気性菌感染に特徴的なパターンである二相性感染と呼ばれている.特に閉鎖腔では膿瘍が形成されることも多い.嫌気性菌のうち,クロストリジウム属(Clostridium spp.)やバクテロイデス・フラジリス群(Bacteroides fragillis group)などは,酸素存在下でも生存が可能であり局所の無酸素状態は必要ではない.
●通常,嫌気性菌は芽胞(spore)形成の有無により,有芽胞嫌気性菌と無芽胞嫌気性菌に大別される.有芽胞嫌気性菌の
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