A.小児ならではのポイント
●小児の救急医療の現場において,不整脈に遭遇することはまれではなく,小児不整脈においては初期治療において無治療にて経過観察してよいものから,早急に治療施行しなければ致命的な血行動態をきたすものまである.
●小児期の不整脈の特色を十分理解したうえで治療にあたることが重要である.小児不整脈の特徴は以下の3点と考える.
①虚血性心臓病に起因するものでなく,無症状で特発性のものが多い.また治療を要することが少なく予後良好な場合が多い.しかし基礎心疾患のない場合予後良好とされる不整脈であっても先天性心臓病術後小児の場合は治療が必要となる場合があり,治療適応に関して症例ごとに異なることも特色である.
②運動時の心事故が多い傾向にある.
③予後自体は不整脈の重症度ならびに基礎心疾患に左右にされることが多い.
B.最初の処置
1頻脈性不整脈の場合
上室性頻拍と心室性頻拍とでは治療法が異なるが,来院時,心不全もしくは血行動態の破綻している場合は,躊躇せず電気的除細動(0.5~2J/kg)を施行する.血行動態が悪くなければ下記の治療を試みる(基本薬剤については表1図に記載).
1上室性頻拍の場合 一般的には,頻拍回路内の房室結節に治療目標を置いた治療戦略となることが多い.
①ice-bag法:迷走神経刺激法で,新生児・乳児において簡便かつ安全に行える治療法である.氷嚢もしくは適切なビニール袋に氷水を入れ,心電図モニター下に児の顔面に当て,軽く圧迫してみる.効果は数秒以内に現れることが多い.学童小児の場合,冷水への息ごらえによる顔面冷水法も有効である.
②ATP薬:アデノシン三リン酸二ナトリウム(アデホス®)急速静注:原則的には末梢静脈より0.1~0.3mg/kgを静注し,瞬時のうちに適量の5%糖液にてフラッシュを行う.なおATPは気管支攣縮をきたすため,喘息児においてはさらなる慎重投与
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