今日の診療
内科診断学

末梢血行異常
本郷 実


末梢血行異常とは

■定義

 末梢血行異常(peripheral circulatory disturbance)とは,さまざまな原因により,四肢末梢の動脈あるいは静脈の血行障害,リンパ流の阻害,減少を生じる状態を指し,末梢動脈閉塞性疾患,急性動脈閉塞症,血栓性静脈炎,深部静脈血栓症(deep vein thrombosis; DVT),下肢静脈瘤,リンパ管炎,リンパ浮腫,Raynaud(レイノー)現象などをきたす.

■患者の訴え方

 患者は,四肢末梢が突然あるいは徐々に「痛い」「冷たい」「びりびりする」「しびれる」「感覚が鈍い」「皮膚が蒼白になる」などと訴える場合が多いが,「ふくらはぎが痙攣して痛い」と感じることもある.なお,上下肢の腫脹を訴える場合,症状を全く伴わないこともある.

■患者が末梢血行異常を訴える頻度

 急性動脈閉塞症のうち,動脈塞栓症では81%の患者は突然に発症し,そのうち約60%は疼痛で,20%は冷感やしびれなどの症状で発症する.また,血栓性静脈炎の場合,83%に疼痛が,62%に浮腫が認められる.下肢静脈瘤では,長時間の立位後に症状を訴える場合が多く,56%に疼痛,倦怠感,違和感が,8%に浮腫がみられるが,18%では無症状であると報告されている.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

 患者が下肢の疼痛を訴え,それが急激な持続性の激痛である場合には,まず動脈瘤の破裂,急性動脈閉塞症,DVTなどを考える.

 夏季あるいは労作時,四肢末端に針で刺すようなチクチクする異常感覚や間欠性の焼けつくような激痛,発赤を訴える場合には,肢端紅痛症を考える.

 慢性かつ間欠性の鈍痛を訴える場合には,閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans; ASO),静脈瘤などを念頭におく.

 動脈性の循環障害による疼痛の場合,皮膚は冷感を伴って蒼白となり,脈拍は減弱あるいは消失す

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