診療支援
診断

眼球振盪(眼振)
nystagmus
有竹 洵
(島根大学医学部附属病院・高度脳卒中センター)
長井 篤
(島根大学医学部内科学第三 教授)

眼球振盪(眼振)とは

定義

 眼球振盪(眼振)とは,眼球の規則性,律動性,不随意性の往復運動を指す.緩徐相と急速相からなる異常眼運動の1つであり,水平性,垂直性,回旋性に分けられる.

 ベッドサイドでの眼振検査では,注視下でみられる注視眼振,Frenzel(フレンツェル)眼鏡(眼球観察用の凸レンズを装着したゴーグル),ビデオ眼振計を用いた,頭の位置による頭位眼振,頭の位置を変化させることによって出現する頭位変換眼振,外耳道に冷水または温水を注入することによって誘発される温度眼振(カロリック試験)を検査する(表1)

 眼振は図1に示すように注視眼振,自発眼振,頭位眼振,頭位変換眼振をそれぞれ記載する.なお,眼振の方向とは急速相の方向で表す.

患者の訴え方

 眼振は他覚的所見を指す言葉で,患者自身が眼振を訴えることはない.むしろ,「めまいがする」「めまいがして目を開けていられない」などの訴えがほとんどである.

 眼振の検査は,めまいやふらつきなどの平衡障害を訴える患者における前庭機能検査の基本であり,さらに小脳・脳幹障害の診察としても重要である.

患者が眼球振盪(眼振)を訴える頻度

 それぞれの眼振の頻度は,基礎疾患の頻度に左右される.良性発作性頭位めまいに伴う眼振の頻度が最も高い.Ménière(メニエール)病は30〜50歳代で女性にやや多くみられ,めまい患者の10%前後を占める.突発性難聴や前庭神経炎がこれに次ぐ頻度でみられる.脳血管障害によるめまい,眼振は高齢者に多い.

 頻度は少ないが,聴神経腫瘍,Ramsay Hunt(ラムゼー ハント)症候群,脊髄小脳変性症,薬物性めまいも見落としてはならない.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

(図2)

 眼球運動は5つの要素からなる(表2).眼振は,これらの眼球運動にかかわる神経機構の異常により生じる.

 中枢性疾患では一定方向性眼振が,前庭神経核

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