診療支援
診断

右後頭部痛
72歳 男性
小林 祥泰
(小林病院 理事長)

現病歴:10年以上前から糖尿病でインスリン治療していたが,最近はインスリン+GLP1配合剤自己注射とSGLT2阻害薬でコントロール比較的良好.2日前から右後頭部付近にチカチカする軽い痛みが出現.当日は痛みが右頭頂部まで広がりズキズキして我慢できないほど強くなったため受診.

既往歴:10年前に左突発性難聴.

生活歴:大手企業で勤務,役員まで務めて退職し,現在は福祉事業を経営.

家族歴:父親に糖尿病あり.くも膜下出血例はない.

身体所見:意識は清明.身長175cm,体重70kg,脈拍80回/分(整),血圧140/86mmHg.頸部リンパ節触知せず.項部硬直なし.振盪性頭痛なし.頭部後屈で放散痛なし.頭部に皮疹,水疱なし.右大後頭神経(C2)出口部に圧痛高度.右C2領域で痛覚過敏あり.脳神経正常.四肢運動,感覚正常.腱反射は上肢正常だがアキレス腱反射減弱.胸部正常.腹部正常.頸動脈雑音なし.浮腫なし.足背動脈正常.眼底鏡検査;明らかな出血,白斑なく視神経乳頭正常.

【問題点の描出】

糖尿病治療中の72歳男性が急に生じたズキズキする右後頭部痛で受診.右大後頭神経(C2)出口部に圧痛高度.右C2領域で痛覚過敏を認める.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・C2領域の帯状疱疹

・くも膜下出血

頻度の高い疾患

・特発性後頭神経痛

・C2領域の帯状疱疹

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 急性発症の頭痛で受診した場合,頭痛の種類,随伴症状が重要である.最も緊急性があるのが突発した頭痛である.激しい頭痛で嘔吐を伴う場合は,まずくも膜下出血を疑う.中等度でも頭を左右に振盪すると痛みが増強する場合は,髄膜刺激症状や脳圧亢進を疑い緊急搬送が必要である.急性の頭痛で発熱を伴う場合は髄膜炎を疑う必要がある.

 本症例は急性発症であるが,嘔吐や発熱などはなく緊急性は高くないと考えてよい.右後頭部から

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