現病歴:3か月前から湿性咳嗽が出現.数週間前から労作時呼吸困難が強くなり,受診.
既往歴:特記すべきことはない.
喫煙歴:1日20本を27年間(27pack-years),アスベスト曝露歴なし.
職業:会社員(デスクワーク).
家族歴:特記すべきことはない.
身体所見:体温36.9℃,脈拍109回/分,血圧126/106mmHg,呼吸数20回/分,SpO2 97%(室内気).右肺野で呼吸音の消失.声音振盪および胸郭振盪は右肺野で低下.聴打診テストは側胸部の中腋窩線上すべてで濁音である.心音は過剰心音なし.頸部,腋窩,鎖骨上リンパ節腫大なし.内頸静脈圧の上昇なし.
【問題点の描出】
生来健康な47歳男性が3か月前からの湿性咳嗽と緩徐な経過を示す労作時呼吸困難で来院し,右大量胸水または高度無気肺を示唆する身体所見を認める.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・肺癌による閉塞性肺炎
・気胸
・結核性胸膜炎
頻度の高い疾患
・癌性胸膜炎
・肺塞栓
・肺炎随伴性胸水/膿胸
この時点で何を考えるか?
医療面接と身体診察を総合して考える点
右肺野全体で呼吸音の消失と声音震盪と胸郭振盪の低下を認めており,右大量胸水または大きな無気肺を示唆する所見である.打診上は過共鳴音や鼓音を認めず,重度気胸の可能性は病歴と合わせても考えにくい.呼吸困難のアルゴリズム〔症候・病態編「呼吸困難」の図2図参照→〕では慢性経過で咳嗽あり,喘鳴なしで鑑別は間質性肺炎,悪性腫瘍(悪性胸水含む),慢性肺炎,胸水が挙がる.湿性咳嗽が初発症状であり,片側無気肺または片側胸水を呈する身体所見から,肺癌がベースにあり癌による気道狭窄や気道圧排/閉塞性肺炎が初発症状であった可能性も挙げられる.
診断仮説(仮の診断)
・悪性胸水
・肺炎随伴性胸水/膿胸
必要なスクリーニング検査
胸部X線,血算,生化学,心電図.
検査結果
血算・生化学・凝固能:異常なし.
心電図:異常な