診療支援
診断

動悸
83歳 女性
中尾 元基
(北海道大学病院循環器内科 助教)
安斉 俊久
(北海道大学大学院循環病態内科学 教授)

現病歴:1年ほど前より,日中の安静時に動悸を自覚していたが,数か月に1度の頻度であったので様子をみていた.3か月ほど前から動悸の頻度が頻回となったため来院した.来院時,動悸は消失していた.心拍が速くなることを不快と自覚している.血圧手帳には動悸の開始時刻が記載されている.動悸は日中に多く,週に1回程度であった.動悸時の心拍数は120〜140回/分ほどである.動悸以外に困っていることはない.

既往歴:高血圧,脂質異常症,骨粗鬆症,手術歴はない.

家族歴:父親は脳梗塞で死去,母親は老衰,同胞は健在だが既往は不明である.

身体所見:意識は清明.身長143cm,体重44.8kg,脈拍78回/分(整),血圧127/72mmHg,呼吸数18回/分,SpO2 97%(room air).頭頸部;顔色は良好,眼球突出(−),頸静脈怒張(−),頸部リンパ節腫脹(−),甲状腺腫大(−).胸部;心音異常なし,心雑音(−),呼吸音異常なし.腹部;平坦,軟,肝・膵触知(−),大動脈瘤触知(−),血管雑音(−).上下肢;正常色調,冷感(−),チアノーゼ(−),下腿浮腫(−).

【問題点の描出】

高血圧,脂質異常症を有する高齢女性.頻脈出現頻度が増加していることを主訴に来院.来院時,症状は消失している.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・致死性不整脈〔心室頻拍,心室細動,torsades de pointes(QT延長症候群),偽性心室頻拍(WPW症候群)〕

頻度の高い疾患

・上室頻脈性不整脈〔心房細動,心房粗動,心房頻拍,発作性上室頻拍,ペースメーカー症候群〕

・心室性不整脈〔心室頻拍(非持続性心室頻拍)〕

・薬物に伴う頻拍

・精神疾患に伴う頻拍

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 動悸を主訴に来院した患者に対しては,まず来院時に動悸が持続しているか否かを確認する.〈p〉動悸発作が持続している

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