症候を診るポイント
●喀痰中のマクロファージのへモジデリン貪食の存在が血痰の根拠となる.
●肺胞出血の可能性を考える.
●喀血なのか吐血を含めた偽性喀血なのかを考える.
▼定義
喀痰のなかに血が混じるものを血痰とよび,血液そのものが下気道から出るものを喀血とよぶ.大量喀血の定義は明確なものはないが,一般的には24時間で100~200mL以上の喀血があれば,大量喀血とよぶ.
▼病態・分類
血痰,喀血の原因は多岐に及ぶ.フランスからの報告では,年間15,000人までの成人入院患者5年間のデータでは,喀血は全入院患者の0.2%に相当し,その半数は原因不明である.原因が判明したなかで呼吸器感染症(22%),肺癌(17.4%),気管支拡張症(6.8%),肺水腫(4.2%),抗凝固薬(3.5%),結核(2.7%),肺塞栓(2.6%),アスペルギルス感染症(1.1%)の順となっている.
▼鑑別診断
血痰,喀血が疑われる場合は,偽性喀血(pseudohemoptysis)を除外することが重要である.上部消化管からの吐血,鼻出血,歯肉出血,咽喉頭癌,遺伝性疾患〔Osler(オスラー)病〕など,上気道,耳鼻科領域からの出血を鑑別する.
表1-27図で示す通り,血痰,喀血の原因は多岐に及ぶが,少量血痰,喀血であっても肺実質病変の全くない中枢気道病変〔気管支結核,多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA),アミロイドーシスなど〕の可能性も考慮すべきである.大量喀血/肺胞出血の原因となるのは全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)やMPO(myeloperoxidase)-ANCA関連血管炎,Goodpasture(グッドパスチャー)症候群による毛細血管炎(capillaritis)である.毛細血管炎は全身
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