診療支援
治療

【1】浮腫
edema
平島 修
(徳洲会奄美ブロック総合診療研修センター)

症候を診るポイント

●緊急時は肝・腎・心・血管をまずは検討する.

●内圧上昇か,薄くなったか,漏れ出るか,回収できないか.

●「とりあえず利尿薬」の対応はしない.

▼定義

 細胞外の組織間液が異常に増加した状態.特に緊急疾患に多いが,診断自体は難しくない場合と原因の確定が初診のみでは困難な場合がある.病歴を丁寧に整理し,浮腫の病態に合わせた鑑別診断を挙げ,検査・フォローアップをする必要がある〔第9章のも参照〕.

▼病態生理

 末梢の毛細血管領域では,1日に約20Lの血漿成分が動脈側毛細血管から間質へろ過され,90%が静脈側の毛細血管から再吸収され,10%がリンパ流から循環に戻る(図1-8).浮腫はろ過されすぎるか,回収(静脈・リンパ)が悪いかで決まる.ろ過速度は毛細血管と間質の静水圧の差,膠質浸透圧の差により規定され,Starling(スターリング)力とよばれる.すなわち,①静水圧の上昇,②膠質浸透圧の低下,③リンパ流の閉塞が浮腫の原因となる.さらに,敗血症やアナフィラキシーなどのように④毛細血管前の細動脈からの拡張とろ過亢進も原因となり,水だけではなく,蛋白も漏出する.

▼初期対応

 救急外来などでの初期対応では,「肝・腎・心・血管」と頻度の高い緊急疾患を念頭に原因検索を行う.命にかかわる緊急疾患には,右心系の圧が上昇する心疾患(虚血性心臓病,収縮性心膜炎)や肺塞栓と末梢血管拡張が急激に進行するアナフィラキシーや敗血症がある.心疾患や肺塞栓では頸静脈圧の上昇,アナフィラキシーや敗血症では四肢末梢の温感が特徴的な身体診察所見であるため浮腫を主訴に来院する患者では足と首の診察から始める

 頸静脈圧の上昇は右房内圧の上昇を推定する診察所見で,あわせてⅡpの亢進,吸・呼気でのⅡ音分裂,三尖弁閉鎖不全に特徴的な吸気で増強する収縮期雑音〔Rivero-Carvallo(リヴェロ・カルヴァロ)徴候〕

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