診療支援
治療

【15】脾腫
splenomegaly
羽田野 義郎
(東京医科歯科大学医学部附属病院・総合診療科/感染制御部副部長)

症候を診るポイント

●脾腫をみたら血液疾患,感染症,肝疾患を考える.

●発熱などを伴う急性脾腫と,慢性的,あるいは無症状の慢性脾腫に分類する.

●発熱を伴えば,感染症と血液疾患を考える.

▼定義

 脾腫の医学的定義とは,文字どおり脾臓が腫大した状態を指す.成人の脾臓の重量は50~250gであり,年齢とともに減少するが,定義のゴールドスタンダードは脾臓の重量である.臨床的に脾臓を触れる臨床所見は脾腫と考えられてきたが,画像的評価では最大16%の患者で正常範囲であったと報告されているため,臨床的に脾腫を疑う患者では画像的な評価が必要となる.超音波所見では脾臓の長径×短径が40cm2以上であれば脾腫と考える.

▼病態生理

 脾臓が腫大する機序としては,主に4つある.炎症性疾患(感染症・自己免疫疾患などの非感染症),血液疾患,門脈圧亢進,および代謝異常である.

▼初期対応

 初期対応としてはまず,脾腫をきたす疾患で緊急性があるかどうかである.急性白血病,敗血症,細菌性心内膜炎,マラリア,うっ血性心不全,血球貪食症候群などが原因ではないかを考える必要がある.急性の脾腫の場合,左上腹部の痛み,膨満感や圧迫感を呈する場合が多い.そのような場合,発熱の有無,貧血の有無は確認する.また必要に応じて血球検査,末梢血塗抹標本,血液培養などのワークアップを早急に行う.

▼鑑別診断

 脾腫はその鑑別診断が重要となる(表1-46)自覚症状の違いで急性脾腫と慢性脾腫にまずは分類する.発熱や左季肋部痛を伴う場合は急性脾腫を疑い,慢性的(腹部膨満感など)あるいは無症状で画像で検出した場合は慢性脾腫を疑う.病歴聴取,身体・神経所見の把握,血液検査,画像検査などを適切な順序で活用する.

 急性脾腫では発熱を伴うことが多く,まず感染症,次に血液疾患を鑑別に挙げる.感染症の場合,鑑別は多岐にわたるが頻度の高いものとしての伝染性単核球症

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