診療支援
治療

【3】多尿
polyuria
五十野 桃子
(筑波大学附属病院・総合診療科)

症候を診るポイント

●多尿と頻尿は必ずしもイコールではない.

●薬剤歴,家族歴,飲水状況を含めた詳細な病歴聴取を行う.

●まずは尿量を測定し,尿浸透圧から鑑別を進めていく.

▼定義

‍ 多尿とは,1日の尿量が3Lを超えることと定義される.尿回数の増加や,夜間尿,口渇,多飲などの症状が出る.ここで注意しなければならないのは,必ずしも尿回数の増加(頻尿)=多尿ではないことである.1回の尿量が少なければ,頻尿であっても必ずしも多尿にはならない〔第9章のも参照〕.

▼病態生理

 糸球体でろ過された原尿は,近位尿細管から集合管を通過して排泄されるまでに水の99%が再吸収される.近位尿細管ではNa+が再吸収されるに伴い,浸透圧勾配に従って水も吸収される.Henle(ヘンレ)の下行脚でも同様に水は浸透圧勾配で再吸収される.集合管ではADHが作用して水が再吸収される.

 原尿の浸透圧がなんらかの原因で高い場合(浸透圧利尿)や,各部位の障害によりNa+再吸収が障害される場合(腎髄質・尿細管障害)などは水の再吸収が阻害され,また,集合管ではADHの作用不足がある(水利尿)と水の再吸収が低下して多尿となる(表1-47)

▼初期対応

 渇中枢の障害がなければ,多尿により循環血漿量が減少すると口渇が生じ,患者は飲水をする.そのため,循環動態が変動することは多くはない.しかし,高齢者や要介護者で口渇反応が乏しく自分で飲水ができない場合や,視床下部を含む頭蓋内疾患などで渇中枢が障害されている場合,電解質異常や腎疾患などの病態を合併する場合などでは脱水が進行し,電解質異常なども伴い意識障害を呈する.その場合は,ABC(気道,呼吸,循環)やバイタルサインなどに注意して初期対応を行う〔本章「意識障害」の項()も参照〕.

 循環動態が安定している場合は,まず多尿であること,つまり1日3L以上の尿が出ていることを尿量測定や蓄尿

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?