診療支援
治療

【5】筋力低下(脱力)
muscle weakness
森川 暢
(市立奈良病院・総合診療科)

症候を診るポイント

●非特異的な倦怠感と真の筋力低下を区別すべきである.

●解剖学的にどこのシステムが障害されているかを考えることが肝要である.

●Guillain-Barré症候群や重症筋無力症は画像検査のみで診断困難であるため注意が必要である.

▼定義

 筋力低下または脱力とは,1つもしくは多数の筋肉の力が低下した状態のことであり,後述するように通常は錐体路の問題であることが多い.脳梗塞後遺症などで筋力低下を以前より認める場合は,感染症などの全身疾患により以前からの筋力低下が顕著化し,新規の脳梗塞と見誤られることがある.全身疾患が否定的であれば,真の筋力低下を考える必要がある.

▼病態生理

 真の筋力低下では,大脳,内包,延髄,脊髄,神経根,末梢神経,神経筋接合部,筋肉のいずれに異常があるかを考えるべきである.さらに解剖学的な検索と並行しつつ,病態生理的に原因を推定することも重要である.例えば解剖学的に末梢神経障害による筋力低下と推定した場合は,その末梢神経障害の原因として,自己免疫,薬剤,感染,代謝疾患などが想起される.解剖学的診断,病態学的診断の2つのstepをもとに鑑別診断を考える必要がある.

▼初期対応

 まずはABC(気道・呼吸・循環)の安定を意識する.脳血管疾患,Guillain-Barré(ギラン-バレー)症候群,重症筋無力症などでは時に,早急な気道確保が必要になる.発症時刻が明確な脳梗塞において治療のゴールデンタイムを逃すことは厳に慎む.たとえ,頭部MRIや脊髄MRIに異常がなくても,Guillain-Barré症候群や重症筋無力症は否定できない.いかに臨床症状から疑い,経験のある専門医につなげることができるかが重要である.感染症などの全身疾患を疑うようなバイタルの異常や倦怠感があれば,通常の採血に加えて,血液ガス分析を躊躇しない.なお,血液ガス分析でA-aDO2の開大を

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