診療支援
治療

【12】複視
diplopia,double vision
稲福 徹也
(稲福内科医院・院長)

症候を診るポイント

●両眼で見ると二重に見えるが片眼で見ると1つになる場合を複視とする.

●像がずれる方向が水平性か垂直性か斜めかで単一脳神経障害に当てはめて鑑別.

●脳動脈瘤の拡大による動眼神経麻痺を見逃さず脳神経外科へ紹介.

●単一脳神経障害で説明がつかない複視は重症筋無力症や甲状腺疾患を検討.

▼定義

 両眼の共同運動が障害されるために物が二重に見えることで,両眼で見ると二重に見えるが単眼だと1つに見える場合を指す.単眼でも二重~多重に見える場合は眼球自体または大脳の異常によることがある.

▼病態生理

 眼球は6つの外眼筋により動きが制御されており,表1-64にその作用方向と神経支配を示す.複視は眼球周囲の構造物,外眼筋,支配する脳神経(末梢神経)および脳幹部(中枢神経)になんらかの異常が生じた結果,両眼の共同運動が障害されるために発生する.水平方向の複視は外転神経麻痺動眼神経麻痺の可能性,垂直性複視は滑車神経麻痺や動眼神経麻痺の可能性がある.単一脳神経障害で説明が困難な複視は外眼筋自体の問題(甲状腺疾患など),神経筋接合部疾患(重症筋無力症など),中枢神経病変などが原因となる.

▼初期対応

①いつから複視が生じたか確認する.日の単位で急に出現した複視は急いで対応する.以前の写真(運転免許証など)があれば比較するとよい.痛みを伴うかは重要である.

②次の3つのポイントを問診する.A.像がずれる方向:横方向なら外転神経麻痺か動眼神経麻痺,縦または斜め方向なら滑車神経麻痺か動眼神経麻痺を疑う.B.遠方視か近見視か:遠くを見たときに複視が強ければ外転神経麻痺,近くを見たときに強ければ動眼神経麻痺を疑う.C.特定の頭位で複視が消えるか:肩に向かって首を傾けている場合は傾いている側の反対側の滑車神経麻痺を疑う.

③合併症として糖尿病,甲状腺機能亢進症の有無,最近の外傷の有無,飲酒歴を聞く.

④神経学

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?