症候を診るポイント
●両眼で見ると二重に見えるが片眼で見ると1つになる場合を複視とする.
●像がずれる方向が水平性か垂直性か斜めかで単一脳神経障害に当てはめて鑑別.
●脳動脈瘤の拡大による動眼神経麻痺を見逃さず脳神経外科へ紹介.
●単一脳神経障害で説明がつかない複視は重症筋無力症や甲状腺疾患を検討.
▼定義
両眼の共同運動が障害されるために物が二重に見えることで,両眼で見ると二重に見えるが単眼だと1つに見える場合を指す.単眼でも二重~多重に見える場合は眼球自体または大脳の異常によることがある.
▼病態生理
眼球は6つの外眼筋により動きが制御されており,表1-64図にその作用方向と神経支配を示す.複視は眼球周囲の構造物,外眼筋,支配する脳神経(末梢神経)および脳幹部(中枢神経)になんらかの異常が生じた結果,両眼の共同運動が障害されるために発生する.水平方向の複視は外転神経麻痺や動眼神経麻痺の可能性,垂直