診療支援
治療

(1)珪肺
silicosis
小倉 高志
(神奈川県立循環器呼吸器病センター・副院長)

疾患を疑うポイント

●関連する職業歴を有する高齢者で,上肺野優位,広義間質に分布する結節性陰影を認めた場合は珪肺を疑う.

学びのポイント

●じん肺管理区分により,労災補償の対象となりうる疾患.

●肺結核,結核性胸膜炎,続発性気胸,続発性気管支炎・気管支拡張症,原発性肺癌,関節リウマチなどの合併症の発症の早期発見や管理が重要.

▼定義

 遊離珪酸を吸入することにより肺に生じる結節性線維化を特徴とする職業性呼吸器疾患.

▼病態

 気道から吸入された遊離珪酸(シリカ/SiO2)を肺胞マクロファージが貪食し,サイトカイン(TNF-α,IL-1),増殖因子(TGF-β)の放出を誘発して線維化を進展させる.粉じんは排泄されにくい上肺に留まりやすく,そこで病理学的に中心部に硝子化を伴い,その周囲に膠原線維を主体とする珪肺結節を形成する.粉じんは排泄過程で,リンパ流により肺門リンパ節や胸膜へ移動する.そのため,珪肺結節は,サルコイドーシスなどと同様にリンパ流の存在する広義間質に分布する.慢性化すると石灰化を形成しやすく,肺門リンパ節では卵殻状石灰化を呈する場合がある.

▼診断

職歴

 一定の粉じん作業歴(鉱業,石切業,砕石業,ガラス工芸など)を有していること.

単純写真

‍ 表2-25にX線分類を示すが,労災では厚生労働省「じん肺標準エックス線写真集」第1型(両肺野に粒状影が少数ある)以上のX線所見を有することが必要になる.

CT

 前述のように,粉じんのリンパ路におけるドレナージ機序に関連して広義間質にそった粒状影,不整形陰影を認める(図2-29).進行すると,線維化が上肺の気管支血管束にそった不整は網状陰影を呈して,さらに線維化が集簇しコンソリデーションを形成する.これを,塊状線維化巣(progressive massive fibrosis:PMF)とよぶ.

▼治療と管理

 根本的な治療はないので,対症療法

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