診療支援
治療

(3)血胸,乳び胸
瀬山 邦明
(順天堂大学大学院先任准教授・呼吸器内科学)

▼血胸

 血胸は胸腔内に相当量の血液が貯留した状態で,胸水中のHtが末梢血中のHtの50%以上を示す場合と定義される.血胸の原因は,①外傷性,②医原性,③非外傷性,に分けられる.外傷性血胸が最も高頻度であり,鈍的外傷による肋骨骨折,胸腔に達する刺傷や銃創などがある.医原性では,中心静脈穿刺,大動脈造影時,胸腔穿刺,胸膜生検などの医療行為に伴って発生しうる.非外傷性では,胸膜への悪性腫瘍の転移,肺血栓塞栓症に対する抗凝固療法,胸腔内異所性子宮内膜症,気胸時に異常血管を含む胸膜癒着部の破裂などがある.治療法は原因により異なる.

▼乳び胸

 ミルク様に混濁した無臭の胸水が貯留した状態を乳び胸とよぶ.胸腔内のいずれかの部位で胸管が破綻しカイロミクロンやLDLに富んだ乳び液が漏出したために生じる.一方,まれであるが,長期間にわたって胸腔内に胸水が貯留した状態が持続すると,コレステロールやレシチン・グロブリン複合体が蓄積して乳び様の混濁した胸水になることがあり,偽乳び胸(コレステロール胸膜炎)とよばれる.

 乳び胸の診断および偽乳び胸との鑑別には胸水中の脂質測定が重要である.トリグリセリド≧110mg/dL,かつ,胸水コレステロール/血清コレステロール比<1.0であれば,乳び胸水と診断する.胸水コレステロール/血清コレステロール比は偽乳び胸との鑑別に重要で,偽乳び胸では胸水コレステロール/血清コレステロール比>1.0となる.さらに,両者の鑑別には,臨床経過(急性発症vs長期の胸水貯留歴),胸部画像での胸膜所見(胸膜は正常vs肥厚)などからも鑑別は可能である.

 乳び胸水の原因には大きく4つがあり,①外傷性,②悪性腫瘍,③特発性,④その他,である.外傷性が最も多く,心大血管,肺,食道の術後に合併しうる.特に,左鎖骨下動脈を巻き込むような手術後,食道切除術後に起こりやすい.次いで,悪性腫瘍が多いが,

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