診療支援
治療

3 収縮性心膜炎
constrictive pericarditis
倉林 正彦
(群馬大学大学院教授・循環器内科学)

疾患を疑うポイント

●呼吸困難感を訴える患者で,下腿浮腫,顔面浮腫,腹水など右心不全徴候を認める場合に本疾患を疑う.

●心エコーやCTにて心膜の肥厚(線維化や石灰化)を認める.

学びのポイント

●基本的な病態は,左右心室の拡張障害とそれによる左右心房圧の上昇と心室拡張末期圧の上昇である.

●右心不全,左心不全の両心不全を呈する疾患である.

●収縮性心膜炎は,基本的には進行性であるので,心膜切開術が唯一の確立した治療である.

▼定義

 収縮性心膜炎は,心膜の器質的変化(炎症による線維性肥厚・癒着,石灰化)が高度に生じることにより,心室の拡張障害をきたす疾患である.

▼病態

 収縮性心膜炎では,4つの心腔内圧や体静脈圧と肺静脈圧が上昇し,均一化する.心房圧が高度に上昇し,かつ,収縮末期容量が減少することに関連して,拡張早期心室吸引(early diastolic ventricular suction)が起こり,拡張早期に急速に血流が心室に流入する.固い心膜のため,心室容積は制限されており,心室充満血流は拡張早期~中期に終了する.そのため,全身の静脈のうっ滞が起こり,肝うっ血,末梢浮腫,腹水,時に心臓性の肝硬変が起こる.

 心室充満が制限されるため,心拍出量が減少し,全身倦怠感,筋萎縮,体重減少が起こる.純粋な収縮性心膜炎では,心筋の収縮性は保たれている.ただし,前負荷が減少するため,駆出率は低下する.心筋は,慢性炎症と線維化のために,収縮力が低下することがある.こうした例では心膜切除術後も予後は悪い.

 また,呼吸周期における胸腔内圧の変化が心腔内圧に伝わらないことが,収縮性心膜炎の病態生理に重要である.健常者では,吸気時に胸腔内圧が低下し,左房圧が低下するため,肺静脈から左房への血流が増加するが,収縮性心膜炎患者では,この過程が障害されるため,左室充満が低下する.左室充満が低下すると,静脈灌流はよ

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