診療支援
治療

2 心室中隔欠損症
ventricular septal defect(VSD)
八尾 厚史
(東京大学講師・保健・健康推進本部)

疾患を疑うポイント

●胸骨左縁第2~4肋間の高調性の強い汎収縮期雑音.

学びのポイント

●汎収縮期雑音が大きいほど修復治療できる可能性が高い.

●無雑音のうえチアノーゼがみられるとEisenmenger化の可能性が高い.

▼定義

 左右心室間の壁に先天的に欠損孔を生じた病態である.

▼病態

 欠損孔を介して左室から右室へとシャント血流が生じ,欠損孔が大きいと高肺血流から容易に肺高血圧を生じる.この場合,左室への容量負荷による左室肥大・拡大と,右室肥大が生じるEisenmenger(アイゼンメンゲル)化が生じると左室内腔は小さくなる

▼疫学

‍ 先天性心疾患のなかで発生頻度が最も多いといわれ,15~20%を占めると考えられている.

▼分類

 心室中隔欠損は欠損孔の部位により,右室流出部,膜様部,右室流入部(心内膜床部位を含む),筋性部欠損の4つに分類される(図3-86).膜様部欠損が最も多く約50%を占める.筋性部欠損は,心エコーにより以前より多く新生児期に発見されるが,その多くは乳児期までに自然閉鎖する.

▼診断

‍ 心雑音を契機に多くが幼少期までに発見される.成人期まで発見されずEisenmenger症候群に移行した例は左右心室が等圧のため心雑音がなく,チアノーゼや息切れなどの症状から発見されることがある.

視診,触診

 頸静脈は心不全を認める場合に突出する.拡張期逆流性雑音に反跳脈(bounding pulse)を認める場合は,大動脈逸脱による大動脈閉鎖不全の合併を考慮する.Rogerタイプの小さな欠損孔では第2~4肋間胸骨左縁に振戦(thrill)を触知することがあり,時に左方・頸部に放散する.

聴診

‍ 胸骨左縁第2~4肋間の高調性の汎収縮期雑音〔Levine(レヴァイン分類)3~4度のことが多い〕を聴取することが多いが大きな穴では雑音はむしろ小さく,Eisenmenger症候群では無雑音あ

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